昨年くらいからオーストラリアにワーホリなどでやって来られる方が Youtube にアップする動画がものすごく増えてきています。オーストラリアにいる日本人はものすごく少ないのでそういう動画が増えてオーストラリアを伝える動画が増えているのは単純にうれしく思います。
ただ、その中で「仕事、クビになりました」的な動画も増えてきていて、動画の内容を見ると「それはクビではないのでは?」と思ことばかりです。これはオーストラリアの雇用形態によるもので、そこでオーストラリアの雇用形態について述べておきたいと思います。
以前の投稿でも述べておりますのでそちらもご確認ください。
オーストラリアの雇用形態
オーストラリアの雇用形態には大きく3つがあります。
- フルタイム (Full Time)
- パートタイム (Part Time)
- カジュアル (Casual)
フルタイムとパートタイムに関しては日本とそんなに違いがないと思います。オーストラリアの場合、フルタイムは原則週38時間、パートタイムは決められた曜日、時間に決められたとおりに働くという感じです。日本のアルバイトと同じような感じで、主婦や学生など週5では働けないけど毎週この日とこの日は働ける、決まって働きたいというような人に向いている雇用形態だと思います。
そして、最後のカジュアルと言うのが日本にない雇用形態です。Youtube で「クビになりました」動画を上げられている方も動画内で「自分はカジュアルと言う雇用形態で雇われていた」と説明されているので、オーストラリアでこの雇用形態で働いたことがある人なら「あぁ、カジュアルね」となると思いますが、日本から動画を見ている方だと何でそれでクビになったかいまいちわからないのではないかと思います。
カジュアルはいつ働けるかが確約されていない雇用形態
カジュアルと言うのは日本語だとカジュアルウェアとかカジュアルなお店、カジュアルなレストランなどと言う場合に使われるのでカジュアルジョブというとピンとこないと思います。もちろん実際の英語でもそのような意味、使われ方もありますが、実際の英語の意味にはその他にも「不規則」のとか「不定期」のといった意味もあり、カジュアルジョブというとこの意味で使われます。
つまり雇用主は必要な時にだけ従業員に声をかけて従業員がOKすれば働いてもらう。なので、レストランなら今日は予想に反してあまり忙しくなかったから、5時間働いてもらうつもりだったけど、もう上がってとか、ファームなら繁忙期には週5日働いてもらいたいけど、シーズンが終われば全く要らないとか天候が悪く作業が出来ない日は必要ないからいらないなど、仕事が不規則になります。ワーホリの方々がこの時点で「クビになりました」動画を上げていますが、これはクビではありません。「仕事のスキルが低いから」とか「悪さなどして問題を起こした」とかでないからです。単純に仕事の需要が無くなりお呼びがかからなくなっただけです。日本人からすると派遣など期間の定めのある仕事で雇止めを受けたような感じで「もう結構」と言われてクビと感じるのかもしれませんが、オージーや他の移民の人達でクビと受け止める人は少ないと思います。むしろ不規則、不定期な雇用形態だからこそ、需要がないとわかった時点ですぐに「ここにいても仕事はもうないからお金を稼ぎたかったら次を探した方が良いよ」という雇う側の優しさからの配慮と考えることも出来ます。
雇われる方も仕事を断れる
一方、カジュアルは雇用主が必要としている時はいつでも働かなければいけないかというとそうではありません。「明日は○○のコンサートを見に行くから働けない」とか「その日は彼氏(彼女)とのデートの予定が入っているので」など従業員のプライベートの都合で断ることも出来ます。双方で働く日時について合意した時だけ働くのがカジュアルです。これがパートタイムやフルタイムの人なら風邪などやむを得ない事情でない限りそういうことは出来ません。カジュアルとはある意味双方にとって都合の良い雇用形態という事が出来ると思います。
不定期の仕事なので割増し手当が豊富
「そんな感じでカジュアルで生計を立てて行けるの?」と思うかもしれませんが、不規則な雇用形態であるだけに、フルタイムやパートの人より有利な手当てがあります。
まず、時給がパートタイムの人と比べて25%増しになります。例えばパートタイムのAさんが時給$20で働いていて、あなたも同じ仕事、同じポジションでカジュアルで契約したらあなたの時給は$25になります。これだけで1時間当たりあなたの方が$5得するわけです。更に土曜日ならパートタイムが時給25%増になるところがカジュアルは50%増しとか日曜はパートタイムが50%増しでカジュアルが75%増し、祝日はパートタイムが225%のところがカジュアルが250%という感じで有利になります。それを現したのが下の表です。
上の例なら祝日の日に7時間働けばその日だけで$490稼ぐことが出来ます。
私の以前の投稿で金属加工の人が月80万円近く稼いでいる事例を上げましたが、週5日働けて週末なども入れて1か月働くとそのようになると言ってます。金属加工は手に職系の仕事でオーストラリアでは重宝される仕事なのかもしれません。英語は喋れなくても日本でやってた経験で図面を見ながらやりとりしてれば何となく要求されていることは理解できるそうです。
一方で不定期の仕事なので有休などはない
カジュアルの人は割増し手当がフルタイムやパートの人達より高いのですが、必要に応じて働く不定期な仕事のため、有休は付与されません。例えば5月丸々日本に帰国するとなった場合、5月の収入はゼロになってしまいます。これがフルタイムやパートタイムの人で有休が残っていれば、有休を使って休んでも収入は発生します。
実際にはカジュアルでもフルタイム働けている人もいますし、週によってばらつきがある人もいるようです。カジュアルでも週5日入れてもらえると、月給40万円とか金属加工の人のように時給をもっと上げてもらって、割増賃金もしっかりつけてもらって月80万円稼ぐという強者もいるわけです。ただし、そうなるためには週5毎週欠かさずシフトに入れてもらうのが絶対条件です。当然雇う側からすると、コスト高になってしまうので、祝日はカジュアルの人をなるべく入れないなど対策を取ってきます。
カジュアル、フルタイムどちらがお得?
上を踏まえて「もし毎週フルタイムで働きたい時、フルタイムとカジュアルどちらが得になるの?」
これはケースバイケースなので一括りには言えません。実際に金属加工の人のように週5日入れてもらって月80万稼ぐ例もあれば(月80万はレアケース、レストランとかサービス業なら週5入れて月40万円くらい)、一方である週は5日入れても別の週は2、3日しか入れてもらえないという人もいると思います。そうなってしまうと高収入をゲットするのは難しいと思います。
週5日入れてもらうようになるためにはその場所で中心選手になるような感じにならないといけません。そうでないとバイトを掛け持ちして複数の場所で働くなどなってしまいます。
それで週5日毎週確保出来ればまだ良いですが、景気が悪くなったりするとどこからもお声がかからなくなってしまうなどリスクもあります。
実際にオージーでもカジュアルで働いている人はたくさんいますし、掛け持ちも珍しくありません。ただ、上述の通り休みを取ってしばらく旅行に行きたいとか日本人なら日本に帰省したいとなった時、カジュアルではその期間の収入はなくなってしまいます。ワーホリで1年あるいは2、3年の短期限定ならそれでも良いかもしれませんが、オーストラリアに定住するとなるとやはり安定した収入が必要になってくるのではないかと思います。
実際にオージーでも最初は「カジュアルの方が仕事の責任もないのに高収入稼げるからカジュアルで掛け持ちの方が良い」と言う人もいます。しかし、やがて結婚し、子供もでき毎月安定した収入を稼がないといけないとなってくると、カジュアルでやっていくのが難しくなってきてだんだんとフルタイムでマネージャー職のポジションをゲットしたいとなってきます。やはりその方が給与も高くなりますし、収入も安定してくるからです。
カジュアルやパートタイムと言うのは時給ベースでの契約になりますが、フルタイムになるとスタッフレベルの仕事なら時給ベースですが、一定のポジションからは年収ベースの契約になってきます。給与も上がる分求められるスキル、結果、義務も増えます。また、ポジションによってはボーナスの条項も加わってきます。なので、時給ベースより年収ベースの契約の方が給料は高くなりますが、現在は極度の人材不足で求人募集の相場も高騰しているので、これもケースバイケースかもしれません。下のリンクは今年2月に地上波で放映された特集のサマリー版です。
(3) [クロ現] 低い賃金 長時間労働 “安いニッポン”を離れ海外へ出稼ぎする若者のホンネ | NHK – YouTube
日本の問題
オーストラリアで高収入を実現できるというのは全くの嘘ではないと思いますが、では誰でも実現できるかと言うとそうでもありません。高収入を確保している人は英語はそこまで喋れなくても日本での職歴があって、日本でスキルを身につけていたという人が多いのではないでしょうか?金属加工の人も看護師の人も日本での職歴がオーストラリアで同じ仕事のゲットにつながり、どちらもそのスキルが買われて高収入につながっているんだと思います。
一方で英語も不得手、スキルもないとなってしまうと最低時給を下回る時給でジャパレス行となってしまう確率が高いと思います。実際にこちらにいる留学生やワーホリの人達はこちらのケースが多いと思われます。
それでも、日本より稼げる確率が高いのがオーストラリア。日本の問題はそもそも給料が低いというのもありますが、正社員ならまだしも非正規やアルバイトなど正社員以外になってしまうと正社員に戻るのが難しく、収入もその日暮らしの分しか稼げなくなってしまうという点でないでしょうか?また残業は当たり前、会社が第一優先というのも日本の特徴だと思います。オーストラリアならカジュアルでも上述の通りそれなりに稼げます。もちろんケースバイケースですが、平均するとフルタイムの人より若干少ないくらいの収入は稼げるのではないでしょうか?転職も1年ごとにしても面接で評価が下がることはないですし、個々で好きな人生設計を描きやすく仕組みが出来ているのは間違いありません。だからこそ1年間がむしゃらに働いて翌年は数か月旅行に出るとかバックパッカーとして世界一周旅行に出るとかオージーに限らずアメリカ人であったりヨーロッパ人は若い頃よくすると思います。
一方、日本は大学出たらそのまま就職し、定年までずっと働き続ける。最近は変わってきてるかもしれませんが、転職は35歳なら2回までとか、一度正社員のレールから外れたら正社員に戻るのは難しいとか、給与はいつまで経っても20万円台、あるいは手取りで十数万円など、これでは自由度はないに等しいです。
ここが変わらない限り、日本が国としても経済を成長させるのも難しいと思います。
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