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オーストラリアは毎年この時期になると翌年度(毎年7月から)の政府予算の決定、そして様々な法律の改正が発表されます(そして町中は至る所で決算バーゲンセールが始まっていくと思います)。

中でも多くの人に興味があるのがビザのルールの変更。移民大国であるオーストラリアでは世界中から多くの人が移住してきており、留学生としてあるいはワーホリビザで学校で勉強したり、アルバイト・仕事などをしながら永住権、就労ビザをめざしている人が大勢います。

今年はコロナ終焉後でもあり、以前の投稿(以下のリンク参照)でも述べましたが現在国内は極端な人手不足が続いている状態で皆がヒーヒ―言っている中での発表という事もあり、注目度は高いと思います。今回の改正でルールが厳しくなるか緩くなるかでこれからの約1年がどうなるかがある程度予測できるからです。

既に発表されているものもありますしこれから発表されるものもあるかと思いますが、その中から我々に関係がありそうなものを抜粋していきたいと思います。

改正内容

①学生ビザ保持者による就業時間の無制限を終了

コロナ以前は学生ビザの人達は週20時間、2週間で40時間までしか働けませんでした。コロナからの脱却後経済が急速に動き出し、人材不足となった中で政府はこの制限を取り払い、「何時間でも働いても結構」としていましたが、7月からは2週間で48時間までとなります。ただし、介護関係の職種に従事している方は例外的に年内いっぱいは変更なしで無制限で働けるようです。詳細はビザの専門家に確認してください。この変更は限定的で本来は昨年で終了しているはずのものでしたが、人材不足でこれまで延長されてきました。また、以前の40時間と比べると8時間増えているので多少緩くなってると見ることも出来ます。

②卒業ビザの期間の延長

オーストラリアに留学している人たちに付与されていた卒業ビザ。どういう所で(大学、大学院、専門学校など)、何の専攻かによっても期間が変わるようですが、卒業後仕事を見つけて、就労ビザや永住権に切り替えるためのステップの一歩として多くの留学生がこれで働いていたと思われますが、これに2年の延長が決定しました。これまで2年間の卒業ビザ付与されていたら4年、3年間の卒業ビザなら5年になります。詳細はビザの専門家に確認してください。

③ワーキングホリデー、同一雇用主で働ける期間を最大6か月へ戻す

こちらも①と同様にコロナからの脱却後、規制が緩和され同一雇用主の元でも6か月以上働けるとなっていましたが、6月一杯で終了だそうです。これは新たにこのビザを申請する場合だそうで、6月30日までに仕事を新たな場所で開始した場合、緩和策は7月1日以降も有効のままだそうです。

④就労ビザ(TSS)-ビザ保有者の報酬(給与)は年収で最低$7万ドルへ

これまでは2013年の改正で決定した$53,900が最低報酬でしたが、今回の改正で一気に$70,000ドルへ。1豪ドル=90円としたら、年収ベースで最低630万円を雇う側は支払わないといけないという事です。このビザを取得する側からすると大幅アップでうれしいと思います。昨今の人手不足でオーストラリアは超売り手市場。内定をもらう人の給与の額も大幅アップしているようです。海外出稼ぎとしてオーストラリアは高収入の国として知られるようになったと思いますが、こういった背景のもとです。政府もスキルのある人へ付与するビザとして、最低報酬を上げざるを得なかったんだと思います。年収5万ドルと言うとワーホリの人やアルバイトレベルの報酬になってしまうのが今のオーストラリアです。最低限サラリーマンが出来るくらいのスキルは持っててねという事だと思います。

⑤就労ビザから永住権への道への緩和策

就労ビザに関しては少し歴史を述べておく必要があると思います。まず、2018年以前は就労ビザと言うとサブクラス457というのが多くの人が保持していたビザだと思います。このビザは同一の雇用主の元で2年間働けば、永住権を申請できるというものでした。技術独立ビザみたいに申請してから移民局の招待状を待つというステップはなく申請して必要書類を提出すれば審査官がそれらをチェック。申請内容に問題がなければ永住権が与えられるので、同一の雇用主のもとで2年働けさえすれば、永住権の取得は(完全ではないにしろ)保証されているので、ものすごく魅力のあるビザだったわけです。

日本人にとっては英語の壁があり、このビザを取る人はあまりいなかったのではないかと思いますが、英語に問題のないアジア系の人達からすると、就労ビザさえ取れてしまえば後は永住権は勝手についてくるという感じの物だったと思うので、オーストラリアでアジア系の移民が急増した理由のひとつになっているのではないかと思います。

しかし、それによって移民が増えすぎてしまい、またべたべたの関係だった中国の経済停滞が顕著になってきてオーストラリア経済も2013年以降停滞し始めたことでアメリカなどと同様に保護主義的な声が強くなり、2018年に大改正が行われました。

この大改正で狙われたのがサラリーマンがやるような職種です。まず、就労ビザを短期と中長期に分けいわゆるオフィスワーク系の仕事は短期の分類に、そして、中長期の分類には医療関係や公認会計士の高度な技術を持った人や手に職系の仕事などを分類。短期に分類された方はそこから永住権の申請は出来ないとされてしまったため、サラリーマンをしてオーストラリアで生きていくという選択肢が多くの人から奪われてしまった形になり、これがコロナ以前にオーストラリアでの永住権取得はほぼ無理と言われる所以となったわけです。

そして今回の改正では人材不足を解消するために短期に分類された就労ビザからでも永住権の道へつながるようにしようというものです。

これは多くの移住者にとって涙がチョチョ切れるニュースだと思います。何故なら2018年の大改正で実質、永住権への道は技術独立ビザしかなくなってしまったからです。その結果、技術独立ビザの方が競争過多になってしまい、ポイント制であるこのビザのインビテーション取得のための最低点がほぼ取得不可能な点数にまで跳ね上がってしまい、多くの移住者を長年苦しませてきた結果になってしまったからです。「永住権を取るのに10年かかてしまった」と言う人もいるかと思いますが、こういったビザの改正の背景によるものだと思います。私の周りでもあの手この手でようやく最低点に到達し申請したけど、今回のインビテーションではまた最低点が5点上がってしまい、その5点を上げるためにまた学校に行って授業を新たに取り(学生ビザで滞在)、翌年5点あげて再挑戦したけど、翌年は更に最低点が5点上がってインビテーションが来なかったなんてことを何年も繰り返している人がいて、「何百万円って金額をはらってるのに未だに永住権が取れない。どれだけオーストラリアに貢献しないといけないんだ」と嘆いている人が何人かいたからです。その人たちも政府が昨年からインビテーションを急増させたことでようやく永住権をゲットできましたが。

こういう人たちの中には何年も学生やりながら週20時間就労し続けて、実務経験はばっちりあって即戦力になるという人も少なくないです(そうでない人ももちろんたくさんいますが)。しかし、ポイント制によって富裕層の子供などは若い時からオーストラリアの大学や大学院に行かせてポイントを稼ぎ永住権を取ることは可能で、資格や学歴は超一級品でも仕事のスキルは全くないとかビジネスマナーや常識などがないなど、ビザ・政府の趣旨と実態が乖離しているという現実もあります。

この改正については現時点では方針を述べるだけに留められ具体的な決定事項は何もありません。年内までに具体的な改正内容が発表されるようです。

⑥ビザ申請の処理速度の改善への投資

アメリカの永住権は申請してから承認されるまで5年近くかかるとかその期間の長さは知られていますが、オーストラリアも2010年台後半はその傾向が顕著になっていました。オーストラリア人と結婚した人がパートナービザを申請してから2年とか3年近く待たされるなど。

その後、コロナにより鎖国、政府も従業員をその時大幅に減らし、開国によりオーストラリアへやって来る人が再び増え始め、ビザのプロセスにも影響。増えすぎてしまったビザの種類を減らしてシンプルにして、システムの改善やルール変更に伴う費用の増加(人件費も含む)への対応として翌年度の予算を大幅に増やすそうです。

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