オーストラリアの不動産事情は日本と異なる部分が多々あります。
家は自分の日々の生活の拠点となる重要な場所。ハズレの家に住むことになってしまったら日々の生活や精神状態にも大きく影響しますし、慣れない海外で様々な人種の人たちが暮らす社会というのは日本では経験がないことで、期待でもあり不安でもあることでしょう。
賃貸物件
日本では家を借りるとなった場合、見知らぬ他人と一緒に住むというのはまずないと思います。最近、日本国内でも海外生活や異文化交流に興味のある日本人が外国人をターゲットにしたゲストハウス的なものに興味を持ってそこにあえて住むという人も増えているようですが、それでも全体の中では極々少数派だと思います。
オーストラリアでは所帯持ちやカップル同士が一軒家あるいはアパート・マンション等の一室を丸借りることはありますが、そうでなければシェアハウスで見知らぬ他人と一緒に暮らすことが一般的です。理由は家賃がものすごく高いからです。例えば現在のパースの家賃相場はシェアハウスで1ベッドルーム当たり週$100から$200ドルぐらいが平均的な物件の相場だと思います。こちらの一軒家あるいはマンション等の1室は4ベッドルームが最近のスタンダードですが、丸ごと借りると1か月で$1,600から$2,500ぐらいが一般的な物件の相場になります。パースの場合、2013年ごろまではこの相場が今の1.5倍近くありましたので、今は大分落ち着いてきた感じです。逆にシドニーは現在のパースよりもっと相場が高いそうです。
シェアハウス・シェアルーム
賃貸物件の場合、大きく分けてシェアハウス、シェアルームの2パターンがあります。シェアハウスは家をシェア。寝室は自分専用の個室が与えられ、キッチン・ダイニング及びバスルームやランドリーが共用。他人と共同生活をしながらもプライベート空間も持てるというメリットがあります。
シェアルームはキッチン等だけでなく寝室も1つの寝室を他人とシェア。通常シングルベッドが2つ置かれていて1つの部屋を2人でシェアします。シェアハウスに比べて更に家賃を抑えられるメリットがあるものの、プライベートは全くないというデメリットがあります。海外の大学に留学されたことのある方は大学の寮の部屋をイメージして頂くとわかりやすいかと思います。パースに関してはシェアハウスもシェアルームも賃貸の広告で見かけますが、一般的にはシェアハウスの方が人気があるように思えます。
スタジオルーム
スタジオルームとは日本でいうレコーディングスタジオとかクリエーターの人が仕事をする部屋ではなく、オーストラリアでは日本の1Kのような部屋を指します。キッチン、ダイニングそして寝室からなっていて、一人で住みたい場合やカップル二人で住むのに適していてます。シェア物件とは異なり完全にプライベート空間を持てるメリットがある一方、家賃はシェア物件より高くなります。私も最初に住んだ物件がスタジオルームだったのですが(当時はマイニングブームの名残もまだまだあって空き物件はほとんど出ていなく、広告が出たらとにかく抑えるしかなかったという状況でした)、寝室と言っても仕切りはなくダイニングスペースに本棚があってその後ろ側にベッドが置かれているという感じの部屋でした。私の前の居住者はカップルでダブルベッドで住んでいました。
家具付き・家具なし物件
賃貸物件の場合、大きく分けて家具付き物件と家具なし物件があります。家具付き物件なら自分の体と荷物だけで入居開始して生活をスタートさせることができますが、家具なし物件ですとそこで生活するために家具を調達する必要が出てきます。
物件によってどこまで家具を調達しないといけないか異なってくると思いますが、シェアハウスで家具なし物件の場合、ダイニング、キッチン等の共用部は通常貸主側ですでに用意されていることが多いと思います。その場合、寝室の収納棚、ベッド等の調達が必要になってきます。一軒家やマンション等の一室丸借りの場合、ダイニングのソファやテーブルからテレビ、冷蔵庫、電子レンジ等も調達しなければいけない感じです。まさに箱(建物)だけを貸す感じです。そしてオーストラリアは家具も普通の家具屋さんに行ったらべらぼうに高いです。基本的に日本の2倍はすると思ってください。日本で10万円するソファーならこちらでは20万円。ちょっと良さげなものなら、ソファーでも40万円近くするものなんてざらですし、ダイニングテーブルなどは70万~80万円なんてもの少なくありません。なので、家具全てを一気にそろえるとなると一体いくらかかるんだという金額がかかってしまいます(なので、私は今まで家具付き物件にしか住んだことはありません)。IKEAもありますが、組み立ては自分でしないといけないので家具全てをIKEAで調達するのは家に物が届いてからが大変だと思いますし、返品の必要が出てきたら更に手間がかかって大変なのではないかと思います。
じゃあ、こっちの人は実際にそれだけの大金を叩いて揃えているかというと、今年はソファ、来年はダイニングテーブルなどと少しづつ買っていったり、Gumtree やガレージセールで中古品を買ったり、年に一度の粗大ごみのゴミ出しの時期に各家庭の前に粗大ごみとして放置された家具をゴミ業者が回収する前にお持ち帰りする人も結構います。日本だとちょっとイメージが良くないかと思いますが、こちらでは結構普通の感覚です。持っていかれた家庭側も「あら、誰か持って行ってくれたんだ」とちょっと喜んだ感じです。前回のブログでも書きましたが、オーストラリアは本当に物価が高いので、いかに工夫して節約するかがカギになってきます。こちらの人は本当にそういう風にして節約に色々工夫しながら質素に生活しています。日本ではとても想像できませんよね?
インターネット・水道光熱費
こちらでは賃貸物件の広告に必ずインターネット使用料や水道光熱費が家賃に含まれているか、別途徴収されるのか記載されていますのでチェックが必要です。もし記載されていなければ必ず確認しましょう。こちらはインターネットはいまだにADSLが主流ですが、データ無制限のプランは月$60近くしますし(安いプランは未だにダウンロード、アップロードのデータ量に制限があります)、水道光熱費もばかになりません。別途徴収するところの場合、金額は一定金額を徴収のところ、実際の請求書に基づいてその物件の住人と一定の割合で分担するところなど色々あります。私の経験では水道光熱費は実際の請求書で均等分担だけどインターネットはただとか、インターネット使用料、水道光熱費共に家賃に含まれているところとかありました。請求書ベースで均等分担のところは高級住宅地の物件でめちゃめちゃ広い2階建ての建物で、自分は実際には請求額の5分の1も使ってないんじゃないかと思いつつ、請求書の3分の1の金額を払っていたなんてこともあります(インターネットはタダだったのでそれを考えればそんなに損はしていないかというのと、オーナーは良い方だったのでそれ以外は特に不満はありませんでした。
賃貸物件に関しての注意事項
オーストラリアで賃貸物件を借りるに際して非常に驚いたことの一つに貸主の権限がすごく強いということです。こちらでは主従関係のような感じで貸主は絶対的な力を持っています。これは借主側が貸主に対して謙らないといけないということではなく、貸主側も普段の振る舞いはフレンドリーな人が多いですが、ある時些細なことで急に気に入らなくなったりすると、今すぐ出ていけなんてこともざらです。一旦そういう決断がされてしまうと、これを覆すのは非常に難しく、至急次の住む場所を確保しなければなりません。ですので、借りる側はとにかく良好な関係を保ち続けられるよう、細心の注意を払う必要があります。内覧前に聞くべきこと、不明点などは全て質問してクリアにして納得いく形で借りる、入居後はキッチン、洗濯機、シャワーの時間帯とかゴミの分別、冷蔵庫、食材の保管棚のスペースの分担など人と共有する物事に関しては最初に話し合って確認することが共同生活を成功させるために不可欠です。例えば何も相談せず洗濯機を使用していてると「あいつ自分が洗濯したい時にいつも洗濯機使用している」なんて思われたりすることもあります。でも、最初に聞けば大抵の場合「そんなこと気にせずいつでも使いたい時に使って」という感じで軽く言ってくれるはずです。最初に確認しとけば、後々問題になることない些細なことでも、確認していないと最初は親切にしてくれても徐々に嫌な態度を取られるなんてことになりかねません。また、掃除の仕方などは日本でもそうだと思いますが、「綺麗」の基準が人によって千差万別ですし、同じ人でもその時の気分によって変わることも普通にあるので、とにかく入居開始当初に面倒でも確認しておくことが必要です。後から知らなかった、こんなはずじゃなかったと言ってもこの国では質問していない、確認していないあなたが悪いとなってしまいます。
こう書くとなんだか脅かすようですが、実際には日本人は他の国の人たちと比べて物の扱いには繊細ですし、他人にも気を配れるので日本で常識のある生活ができていれば、こちらではかなり優等生として見られるのではないかと思います。また、こちらでは様々な人種の人たちとシェアメイトとして生活していくなかで異文化を知ることができるというメリットがある一方、日本では考えられないような非常識も目にすることがあります。
もし我慢できないことがあれば、そういったことも話し合って解決していくことが共同生活を成功させるカギとなりますし、何も言わないというのは同意していることとこちらでは見なされるので、我慢して黙っているという選択はやめましょう。我慢して不満が積もり積もってけんかになった時に初めて「あの時のxxが気に入らなかった」と色々不満をぶちまけた場合、こちらではたとえあなたの言う通りに相手に非があっても、誰もあなたの味方になってくれません。不満があるときはその時に話し合って解決策を見つけ出していくべき、というのがこの国の考え方で、後でぐちぐちいうのはずるいという印象があります。特に日本人は問題があった時に相手と面と向かって話し合うのがとても苦手で我慢してしまう人が多いと思います。実際にこちらの人たちの日本人の印象のひとつは「面と向かっては何も言わないけど、陰であれこれ不満を言いまくる」です。億劫でも何か不満や迷惑をこうむることがあった時は建設的に話し合って解決することが必要になってきます。話し合って解決策が見つかる場合もありますし、こちらの人は我が強い人も多いので聞く耳持たないという感じの人もたくさんいます。いずれにしても、その時に話し合わないで後で不満を色々ぶちまけるという行為はこの国では同情を得ることはできません。
また、貸主側は契約期間中でも部屋がきれいに使われているかインスペクションのために定期的に家に入って来たり(2週間前とか事前にメールや手紙などで知らせが来ます)、いつでも好きな時に所有物件を売却できます。スタジオルームに住んでいた時に不動産屋からオーナーが売却を決めたと連絡がありました。「賃貸の契約期間中はあなたはそのまま住めるけど、その後は新しいオーナーがそこに住むのであればあなたは出ていかなければならない」と言われ、まあ契約期間後(2か月後)は仕様がないかと納得したのですが、驚いたのはこれから物件を広告に出すので内覧したい人が現れた時は中を見せないといけないということでした。「え、私今住んでるんですけど。。。私のものが色々置いてある状態でも見せるの?」と聞くと「買いたい人は中も見ないで家買えないでしょ?」、何言ってるのあなた?という感じで、そこからほぼ毎週末内覧が数か月続きました。不動産屋からは「私たち合いかぎ持っているから、別に内覧の時間帯(1時間程度)にいなくてもいいわよ」と言われましたが、「いやいや、私もあなたも全く知らない赤の他人がぞろぞろ入ってきて、私物がなくなったらどうすんの?」と聞き返すと「大丈夫。ちゃんと目を見張っておくから安心して!」←絶対売り込みに必死で見張っている暇なんてない、と思ったので結局いつもつきそう羽目に。
結局内覧は半年近く続いたのですが、物件自体誰も買いたくないような非常に古い物件で、当時はマイニングブームの終焉とともにみな不動産物件を値崩れする前に売却したがっていたので売れる状況でなかったのですが、最後は不動産屋から「オーナー(夫婦で所有)の奥さんの方が、あなたが住んでいるから売れないんだと言っていて、今すぐ出ていかないといけない」と言われ出ていかなければなくなりました。私も「売れないのは今のマーケットの状況だろう」と反論しましたが、不動産屋は私とオーナーで板挟み状態で、「あなたの言うことはもっともでオーナー側も旦那さんは売れるまで住んでいてほしいと言ってくれているんだけど、奥さんがとにかくダメと言ってきかないんだよ。この国ではどんなに理不尽でもオーナーの言うことが絶対なんだ。わかってくれ。」という感じで、しぶしぶ出ていくことになりました。
余談ですが、引っ越した後も時々パースの街中でバッタリ当時の隣の住人に出会うことがあり、その人の話だと1年たった後も結局買い手が見つからず、賃貸で私が払っていた家賃より週80ドル下げて募集しているけど未だに次の借主見つかってないよとのことでした。恐らくオーナー夫婦の仲は険悪になっていることでしょう。笑
海外生活は楽しいことばかりではありません。。。でも、精神的に強くなれます。笑
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