Blog

仕事、就職という視点で海外に出ることの意味。第2弾

前回は1980年代から世界の大まかな歴史、変動について触れました。何故なら、80年代までは日米欧が先進国で経済の中心で、アジアはまだ発展途上国と称されていましたが、90年代後半からシンガポール、香港がアジア経済のハブとなるべくして台頭してきて、中国は世界の工場と称され2000年代を中心に毎年2桁の成長率を達成し、東南アジア諸国も大きく成長し始めたのがこの頃から。一方、日本はバブル崩壊以降人件費の削減、派遣や日雇いへのシフトなど「失われた十年」と言われる対照的な時を過ごしてきたからです。その間に東南アジアでは多くの雇用が創設され、Windows95やインターネットの登場で外国の情報が簡単に手に入るようになり、LCCの登場で海外への移動も容易になり世界では多くの人がより良い生活を求めて外国に移住する人が急増していると思います。

グローバル化と言われて久しくなりますが、1990年代よりは2000年代、2000年代よりは2010年代の方が確実にスピードがあがっています。例えば今では海外就職、世界就職といった言葉や老後の移住といったテーマがネットでは非常に多く見られ、実際にタイやフィリピン、マレーシアなどに移住した人がブログやYouTubeなどで現地の様子を紹介したり、アメリカや、オーストラリア・NZ、カナダ、ヨーロッパといった国々で留学、就職している人たちも気軽にYouTubeに動画をアップしていて、現在はすべてを見切れないほどの数になっていると思います。これは2000年代でも考えられなかったことではないでしょうか?

グローバル化によって大きく変わったことは、かつて世界の富が日米欧で大半を占有されていたものが、アジアへの投資によって分散されたことだと思います。80年代はまだアジアは開発途上。インフラや投資に関する法律なども整備されていなくお金が日米欧で回っていたものが経済が成長し、飽和状態になった段階で注目されたのがアジア圏の開発だったと思います。アメリカは80年代後半から90年代前半にかけて不景気で日本は90年代前半にバブルがはじけ、多くの企業が安い人件費を求めて工場を海外に移し、国内の売り上げが芳しくない中で海外重視の戦略に経営をシフトしていきました。

東南アジアでは多くの雇用が創設され、富裕層はさらにリッチに、一般の人も仕事、収入を得ることで経済力を付けていき、現在はオーストラリアを始め欧米圏に移住している人が増えていると思います。

私のブログでも度々述べていますが、オーストラリアでは多くのアジア系移民がローカル企業でスーパーバイザー、マネージャー職に就いています。当然、就業経験、職種に見合った給料を得ていて、さらに上のステップを目指しています。一方で日本では非正規が増えている、同一労働同一賃金によって正社員の給料が下がるのではなどという話が出ている状況だと思います。多くのサイトで、同じ仕事が海外なら日本よりもっと高い給料で雇ってもらえると書かれていますし、実際にその通りだと思います。今多くの人が考えているのは「それならば自分も海外に出るべきか?」ではないでしょうか?

私が思うに、人それぞれだと思います。何が自分にとって重要かによってです。楽を求めるなら日本が一番だと思います。日本の方が仕事が楽という意味ではなく日本なら言葉の壁もないですし、食べ物も馴染みのもの、習慣、常識などの生活の部分であなたは既に身に着けていて、大抵のことがツーカーで進められるからです。何といっても日本人であることであなたはネイティブ、マジョリティの一員。海外ではまずこの辺から慣れることに数年とか長い時間、労力を費やさなければなりません。

とにかく仕事がしたい。収入を増やしたい。正社員として職歴を付けて生活を安定させたい。こういった方であれば「段階を踏んで」出ていくべきだと思います。海外は即戦力重視です。職歴がなければ話になりませんし、日本のような先輩・後輩関係はありませんが実力主義でドライです。できる人はヒーローのような称賛を受けますが、ミスが多かったり人の足を引っ張るような感じですと、露骨に邪魔もの扱いする人も中にはいます。また、私の経験ではヨーロッパ系の人は複数言語を話す人も多く、外国語の習得の難しさを身をもって理解している人が多いので、現地の言葉が流暢に喋らなくても寛容ですが、英語圏の人は「英語は国際社会で共通語だからノンネイティブは英語を喋れるように勉強しないといけない。我々はわざわざ共通語でもない外国語を学ぶ必要はない」というステレオタイプな考えを持っている人も少なくなく、英語をうまく喋れない外国人スタッフに対して「あいつ何でこの国に住んでいて英語を喋れないんだよ」などとストレスを感じる人もいます(特にその外国人スタッフがトラブルを起こしたけど、うまく状況を上司に説明できない場合など)。

ですので、まずは日本で職歴、スキル、語学をつけることが重要です。最近は海外に留学してもその後、仕事がゲットできなくて泣く泣く母国に帰るという話も少なくありません。就職するにはまず現地の大学を卒業することが近道であるため、就職の前段階として留学している人で溢れかえっています。例えば経理で求人募集を出すと大抵の応募者がオーストラリアの大学院を出て会計のマスターを取得していてCPAも持っているあるいは一部科目合格済の人がほとんどです。こうなるとマスターを持っている、CPAを持っていることが有利ではなく、どれだけ実務経験があるかの勝負になってしまいます。

海外に出てみるとわかると思いますが、もうアジアと日本ではそんなに変わりがないのではと痛感させられます。例えば東南アジアの都市部でも日本と同じような近代的なビルが立ち並び、ショッピングモールも普通にあり、日本でおなじみの多くのブランドも当たり前のように出店しています。パッと見た感じは何ら日本の都市部と違いはありません。物価もかつては雲泥の差がありましたが、めちゃめちゃ安いと感じることはないです。むしろ吉野家など牛丼の並が300円とか、ワンコインランチとか居酒屋とかでビール1杯300円とかで飲食できる日本がかつてのアジア圏の国のようにすら思えます。

このまま日本人が日本に閉じこもっていれば、その間に更に多くのアジア圏の人たちが欧米を中心に移住してそこで仕事をゲットして、昇進してステップアップしていくと思われます。どちらの方が世界で通用するビジネスマンであるかは明らかですよね。そんな彼らが将来日本に赴任して日本人スタッフをローカルスタッフとして使うなんてことも、10年後とかもしかしたら珍しくなくなるのかもしれません。

時代は新たな局面に入ったと思います。しかし、私は日本でも同じことが昔に起きていたと思います。
それは60年代や70年代の高度経済成長の時期に多くの地方に住む人が東京や大阪に出てきたと思います。いわゆる出稼ぎです。東京や大阪に出れば地元よりもっと稼げる。私は東京の出身で親もそうですが、地元の友人や知り合いなどは親は地方出身の人がほとんどです。私が小学生の頃は夏休みとかゴールデンウィーク、年末年始とか長い休みになるとクラスの同級生はみんな親の田舎に帰ってしまいました。たまたま何らかの事情で帰省しなかった同級生がいれば毎日一緒にいることができましたが、そうでなければ私はその時はひとりぼっちかで寂しかったですし、今では信じられないかもしれませんが、都内は帰省の時期はデパートもお店もみな休業で(まさに今のオーストラリアのようでした)、渋谷のスクランブル交差点辺りも人影は全くありませんでした。「来週から田舎に帰るんだよね」とウキウキしながら話す同級生を見てすごく羨ましく思っていましたし、なんで自分には田舎がないんだろうと不満に思っていました。

多分、当時東京や大阪に出ていく人の気持ちは今、海外に出ていく人たちと同じ気持ちだったのではないでしょうか?東京や大阪という見知らぬ土地で、言葉も地元と違う土地でうまくやっていけるか?当時は飛行機なんて乗れる時代ではなく、夜行列車で長い時間かけて東京にやってくるのが主流だったと思います。九州や東北、北海道辺りからなら今飛行機でオーストラリアに行くのと同じくらい時間がかかったと思います。滅多に地元に帰れないくらい遠い場所。かつて日本で起きたことがいま世界地図の上で起きていると私は思っています。東京が世界地図では中心でなく一地方。シンガポールやアメリカの大都市、オーストラリアやヨーロッパ圏がいま移民を多く抱えていて、投資も増えていて物価、不動産が高騰しています。物価も高いですが、当然給料も上がります。

もう、これからは海外に出稼ぎに行く。かつて地方から東京に出稼ぎに出ていったように。その中ではもちろん競争も厳しくなります。ライバルが地球規模になるからです。職歴、スキル、コミュニケーション能力といったものは今以上に必要になってくると思います。今は地方から東京や大阪に出ていくなんて普通ですし、気軽に地元にも帰れますよね?夏のお盆の時期やゴールデンウィーク、年末年始などは地方への帰省ラッシュがすごいですが、10年後は海外から日本に帰省する人で溢れかえるなんてことが珍しくなくなるのかもしれません。

最初にグロバール化がもたらしたものは世界の富の分散と述べましたが、今世界で起きていることは:

1) 先進国、途上国の富裕層は自分の潤沢な資金を海外に投資して更に儲けてリッチになる
2) 先進国、途上国の貧困層は元々貧乏で投資できるような資産もないのでそのまま状況は変わらず
3) 先進国の中間層は投資で大きな利益を稼げるほどの余剰資金はなく、むしろ産業の空洞化によってリストラなどに会い正社員の職を新たにゲットできたとしても収入が前職よりダウンしたりバイトや派遣になってその日暮らしを強いられている
4) アジア諸国の人たちが海外からの投資で雇用をゲットし中間層を増やしている

お金持ちはスーパーリッチに、中間層は貧困層に向かい格差が拡大していると先進国の中間層の多くの人が感じていると思います。

日本はとりわけ高度経済成長の時期に他国からの投資をほとんど受けることなく自力で成長し富が国内で再分配され終身雇用や国民総中間層と言われる状況を作り出しましたので、産業の空洞化により多くの人が影響を受けていると思います。

ただ、これは先進国で同様のことが起こっていると思いますし、アメリカ、オーストラリア、NZの自国第一主義や、イギリスのブレグジットはそれらの国々の中間層の不満の爆発の結果です。「ここ数年給料が上がらない」とか「以前は同じ仕事でももっと稼げた」なんて会話は日本だけでなく欧米でも起きています。トランプ大統領が大統領になれたのも、中間層のそうしたもやもやした不満をうまくつついて「今の状況は正しくない、何故こうなったか、グローバル化なんてものを推奨している政治家、富裕層を中心とした奴らは自分たちが海外に投資して儲けたいからで、その結果あなたたちはどうなった?あなたたちは被害者なんだ」と認識させて不満を爆発させた戦略で彼らから多くの票をゲットすることができたといわれています。

一方でグローバル化がここまで進んだ今引き戻すことは出来ませんし、日米欧以外の国、地域の人からすれば、グローバル化以前は今日生きていけるかすらわからない人たちも少なくなく、日米欧だけが経済的に裕福なのはおかしいとずっと主張してきていましたし、グローバル化によって日米欧の人たちのように経済的に自立できるようになったので、グローバル化に逆行することには大反対の人が多いと思います。

海外に出るか出ないか?決めるのは誰でもないあなた自身です。

Comment

  1. No comments yet.

  1. No trackbacks yet.