さて、前々回、前回でオーストラリアにおける実際の日本人の就労事情、仕事をゲットするために必要なものを述べてきました。
今回はオーストラリアに長期滞在(移住)または永住したいと考えている方にどういう仕事をゲットすべきかを述べていきたいと思います。誤解して頂きたくないのは、私は以下に述べることを押し付けるつもりはありません。あくまで、これまでの経験で感じたことを述べるだけで、どんな仕事をゲットしたら幸せになれるかとか断言するつもりもありませんし、そんなことはできません。人それぞれ違いますし、やりたいことがあるのならばそれを目指すことに反対するつもりもありません。
ただ、前々回、前回に渡って述べてきたことを踏まえて、移住や永住する場合にワーホリや留学などの短期滞在とは違ってどういうことを考えたほうが良いか?何故ならば、長期に渡って住む、移住するというのはそこで自分の土台や城を築いていくわけですし、永住なら日本に戻らないことを前提としているからです。ワーホリの方なら1,2年、留学生なら2年~4年くらいの滞在かと思います。そして、食費や住む場所、洋服などかなり切り詰めた生活をその期間している人がほとんどですが、移住や永住となるとそうはいきませんし、要はこちらでの一般的なサラリーマンのような生活を築く必要があるわけです。
まず、前回のブログで実際にオーストラリアで日本人が就く仕事として下記を挙げました。
①日系企業(下記を除く)
②IT企業、会計事務所
③日本食レストラン、日系スーパー、
④ツアーガイド、日系旅行代理店、留学エージェント、観光客向けのお土産屋さん
⑤ホテル
⑥マッサージ、指圧
⑦日本人向けの美容院
⑧ファーム(主にワーホリの方など短期の労働)
②を除いては基本的にいわゆるサービス業です。そして、ワーホリや留学などでこれらの職業に就かれた多くの方が、上記のようなところ(②、⑤は除く)の中には法律で定められた最低賃金を下回る時給で日本人を雇っている、ローカル企業で仕事をゲットできれば最低賃金を超える時給が保証されると言っています。現在の最低賃金は時給換算で$18.93、現在のレートである1豪ドル=83.23円で計算すると約1,575円です。人を雇いたいときに最低賃金で募集を出すところは通常ないので、通常スタッフレベルのポジションでも1,800円とか2,000円近くあたりが相場だと思われますし、それよりも上の時給での募集も職種によってはあると思います。そしてオーストラリアでは週末、祝日や夜間などの割増賃金も法律で色々決められているので、人によっては平均すると20ドル半ばあるいは20ドル後半くらいを1時間で稼ぐことができると思います。実際に私の勤め先でも、1か月でフルに働いたらスタッフでも$4,000前後稼ぐ人も珍しくないです。
オーストラリアの平均年収を色々ネットで検索してみると、現在は州によって差はありますが大体$75,000あたり(日本円で約620万円ほど)になるようです。マイニングブーム(資源ブーム)の名残がまだあった2013年頃はこれが$100,000に近かったと思うので、政府は堅調な経済成長をアピールしていますが、実態としてはかなり落ちてきていると思います。そうは言っても日本の平均収入が420万円ほどと聞くと、実際にオーストラリアでのほうが稼げると思いますし、他のブログでも20ドルを超える時給をもらっているという方も見かけますし、日本では貯金ゼロだけどオーストラリアに来ればワーホリでも100万円貯められるなんてブログも見かけます。
私の経験からすると確かにオーストラリアで100万円を貯めるのは不可能ではないと思いますが、オーストラリアは平均年収が高い一方、物価も平均すると日本の1.5倍近くあると思われるので(「J-3 オーストラリアでの生活」 参照)出費がかさみます。ですので、実際に100万円貯めようと思ったらかなり計画的に節約して切り詰めた生活をすることが必要です。節約するということは何でも自分で時間と労力を費やしてやるということですし、生活の質自体も落とすことになります。出費はある意味お金を払うかわりに自由な時間や質を買うということでもあるわけです。例えばレストランに行けば自分で調理する必要がなく友達あるいは家族などと会話しながら美味しい料理を食べれますが、自炊なら食材の買い出しから、下処理・調理、そして最後の皿洗いまで食事も含めて2時間くらいは忙しいわけです。また、パンやパスタは$1~$3程度で買えるので食費を削るには持って来いですが、配偶者やお子さんがいるとなれば、ずっとそれらに頼るわけにはいかないと思いますし、電車やバスで行くところを自転車で行けば電車賃は節約はできますが所要時間は数倍になります。家具付きの家に住めば家具を購入する必要はありませんが、家具なし物件より家賃は高くなりますし、家具なし物件を借りてIKEAで家具を全て調達すれば自分で組み立てないといけないのでかなりの時間と労力を費やしますし、返品の必要が生じた場合は気が遠くなる作業です。
ワーホリや留学などで1年、2年の生活ならまだしも、家族を連れて、子供を抱えての生活であればそういうわけにはいかず、自分でやるところと手を抜く部分との棲み分けが必要になってくると思います。そうなれば当然それなりの支出が伴ってきますし、やはりそれをまかなえるだけの収入が欲しくなってくると思います。
上記の仕事でいくら時給が20ドル近くあるいはそれを超える時給といっても、上述の通りオーストラリアの平均年収が$75,000ドルであるならば時給換算すると約$38ドルです(オーストラリアはフルタイムで週38時間労働と法律で定められているので、年52週で1,976時間とした場合の時給換算です)。オーストラリアも日本と同様に医者や金融関係の仕事は高収入ですが、サービス業はハードワーク、働く時間が不規則、低賃金などで離職率が高い代表的な職種となっており、人と接することが好きとかでないと長続きのしない仕事であることは日本と変わりません。
ですので、例えば日本で多くの人が就く営業、経理、人事などのオフィスワーク系の仕事をされてきた方であればやはりこちらでも同じ職種が良いわけですが、上記の通り、日本人が実際にこちらで手にする職業には含まれておらず、こちらに住んでいる日本人には非常にハードルの高い多くの人がいつか就きたいと夢見ている職種になっていると思います。また、経理ならこれまではオーストラリアに留学して会計を勉強して卒業後にCPAの資格を取って会計事務所やローカル企業での経理職に就くというのが永住権につながりやすく人気のコースの一つでしたが、そのような留学生の激増による競争過多や今年から始まった新たな就労ビザ(TSS)がこれらの仕事で永住権につなげることを認めなくしてしまったため、これらの仕事で長期的なプランを立てるのがより一層難しくなっているのが現状です。
とは言っても、全く不可能かというと私はまだ道があると思います。まず、私が思うに今後は留学よりも日本で一定のキャリアを積んでから海外に挑戦する方が可能性が高くなるのではと考えております。就労ビザが厳しくなったのも、移民が国民から仕事を奪っているという国民の反発の声に応えた部分はもちろんあると思いますが、一方で政府としては多くのオーストラリア企業が移民に頼らざるを得ない現状があることも理解していると思いますし、ローカル企業のマネージャーやシニア職に就いている多くのオージーが、怠け者のオージースタッフよりハードワークで長時間労働にも文句を言わないアジア系スタッフを重宝している現実があります。実際に多くのアジア系の人たちが評価されてローカル企業でスーパーバイザーやマネージャー職に就いているので、日本人にだって不可能ではない話ですし、むしろ日本人こそそういう部分ではどの国の人たちにも負けないと思います。ただ、ローカル企業に潜り込むきっかけをつかめていないだけです。
では、どうするか?まずはスタッフ職、インターン、バイトでも何でもいいのでとにかく仕事をゲットする。就労ビザにはTSSともうひとつRSMSビザという地方版就労ビザがあります。RSMSビザはオージーたちが行きたがらないような地方(要は田舎)の活性化を目的としているので申請できる職種の幅もTSSより広いですし条件が緩くなっているだけでなく、それ自体が永住権となっているのでRSMSビザ取得後に一定の条件(地方に3年間、同一の雇用主の下で働くなど)さえしっかり満たせば、他の永住権と同様のものとなります。
(2018年7月15日追記:RSMSビザの近況を下記のサイトで確認しましたが、2018年6月19日現在、Direct Entry で申請する場合は結果が出るのに24か月ほどかかることが見込まれます。https://www.homeaffairs.gov.au/trav/visa-1/187-昨年の今頃で1年前後の見込みでしたので(これでも相当長いです)、今年から始まったTSSビザの導入により、恐らく多くの人がRSMSビザしか方法がないと考えて、このビザを取る方向に向かっていってるのだと推察されます。尚、私はビザの専門家ではないのでビザに関しての詳細な説明やアドバイスを提供することはできませんし、私がこのブログで述べるビザに関する情報の正確性については保証できません。詳細はビザの専門家にお尋ねください。また、RSMSビザや他のビザの概要だけならネットでいくらでも検索することができます)
シドニーやメルボルン、ブリズベンなどの都市部で就労ビザをゲットするのが難しいのは日本人でもアジア系の人でも同じで条件に違いはありません。私が思うにアジア系の人たちの方が積極的で地方に行くことも辞さない、それで永住権が取れるならどんなど田舎でもどこでも行こうじゃないかと考えて行動に移す人が多いような気がします。
RSMSビザの詳細、取得方法、要件などにつきましては専門家にお尋ねください。
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