先日発表されたオーストラリア政府による移民政策の大改革。これは方針を発表しただけで一部既に実行されているものを覗いて大部分がまだ法律で施行されたわけではありません。アクションプランに大まかな実施時期の目途が記されています。大半は今年の後半以降とされています。
Migration Strategy – Action Plan (homeaffairs.gov.au)
先日の投稿では概略だけ述べましたが、今回は少し深く掘り下げてみたいと思います。
Skills in demand – Specialist Skills Pathway
新たに創設するとされている Skills in demand ビザ。新たな就労ビザでこれが施行されると現行の TSS ビザは廃止されます。
Skills in demand ビザでは3つの Pathway を設けています。
- オーストラリアの生産性を向上させオーストラリア経済を発展させるような高度な知識、経験をもつ人向け- Specialist Skills Pathway
- オーストラリアの生活基盤を支える技術、サービスの知識、経験を持つ人向け(現在のTSSビザに相当するもの)- Core Skills Pathway
- 給与水準の低い業界(極度の人材不足が発生)などでスキルを持った人 – Essential Skills Pathway
今回は Specialist Skills Pathway について見ていきたいと思います。
まず、このビザは高度な知識や経験を持ち、$135,000 以上の給与を得ている人とされています。コロナ脱却後の未来においてオーストラリアの更なる経済発展やセキュリティの向上、2050年までのネットゼロ社会に向けて実現を可能にする技術など、オーストラリアにとって重要で、それらに関する高度な知識や経験のある人には積極的にビザを出していこうというのがあると思います。
経済発展には輸出を増やすことも重要で、海外に販売していくには輸出品(物、サービス)の質の向上が必要で、このビザではオーストラリア人に技術を伝えてトレーニングできるようなマネージャー、セキュリティに関してはサイバーセキュリティやこれから進んで行くあるいは新たに世の中に出てくる技術(AIなど)の高度な知識や経験を持っている人などをターゲットにしています。オーストラリアでは携帯大手の Optus などがサイバー攻撃に会い、国民の1/3ほどの個人情報が盗まれるなど度々被害に会ってきています。なので、手に職系の技術をもって労働者として働いているシェフや美容師、電気工事士、自動車整備士といった人やオフィスワーカーのような一般的な仕事をしているサラリーマンなどは対象外としています。
ここでのポイントは経済発展・生産性の向上、ネットゼロ社会を実現するための技術、セキュリティの向上で、例えば自動車整備士でもマネージャーとしてスタッフを教育しそのスタッフが自動車整備士として渡り歩いていけるよう教育して育てる立場にあれば良いのではないかと思われます(詳細はビザの専門家に確認することをお勧めします)。しかし、自分が自動車整備士として得た知識や経験を用いて自動車の整備をしているだけだとオーストラリア経済の発展に向上しているとは見なされないことが想像されます。あるいは自分で会社を立ち上げローカルの人を従業員として雇うというのも雇用の創設という点でオーストラリア経済の向上に貢献していると見なされたり、IT系の新しい技術を取り入れてそのビジネスの生産性や利益率を向上させたり、サイバーセキュリティなどに関する高度な知識を有してサイバーアタックに対抗することが出来るような人材もこのビザに該当すると思われます。
よって、TSSビザなどの対象となっているシェフ、会計士、自動車整備士、美容師などはこの Pathway でなくもう一つの Core Skills Pathway からの申請になると説明されていると思われます。
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