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日本のダンスグループ、アバンギャルディがAGT2023(America’s Got Talent 2023)に出演し、注目を集めています。審査員からは大絶賛のコメントの嵐。Youtube にアップされている動画では「これが今回の優勝間違いないでしょ」とか「こんなの今まで見たことない」、「シンク(ロナイズ)の完成度の高さやばすぎ」的な英語のコメントが非常に多く見られます。しかし、結局ファイナルを制することはできませんでしたし、ファイナル出場も敗者復活という感じで何とか果たせたという感じでした。。「じゃあ、実際にはそんなに評価は高くなかったていう事?」、「審査員のあの絶賛はリップサービス?」かというとそんなこともないと思います。

私はアメリカに住んでいるわけではないので、実際に現地でどれだけ反響があるかとかはわかりませんが、海外に長く住んでいるものとしての考察を述べてみたいと思います。

まず、彼女たちが高い評価を得ているのは大きく以下に大別されると思います。

  • 完成された想像を超えるレベルの高いダンス
  • 大勢のダンスでこんなに息を合わせられるのは稀有、チームプレーは日本の専売特許
  • 他のグループには見られない日本の独自性

完成された想像を超えるレベルの高いダンス

まず、そもそも彼女たちの個々のダンスのレベルの高さ。単純にこれだけで審査員をびっくりさせていると思います。審査員も最初の出演の際は「どちらからいらしたの?」、「海外からAGTに出演される人達はみなアメリカのハンバーガーはおいしいと言ってくれてるけど、あなたたちはもうこっちでハンバーガーを食べたかしら?」という感じですし、「あなたたちはこれまでのダンスグループとどこが違うのかしら?」という質問に対し「私たちは日本の魂を込めたオリジナリティを加えたダンスを披露します」と答えたら「あら、それじゃその日本の魂を込めたダンスとやらを見せてもらいましょうか」と完全に舐めた、期待していない感じの雰囲気を出していました。

そもそもアバンギャルディの事を知らないし、日本のダンスのレベルの高さも知らないと思うので当然ですが、辛口コメントで有名なサイモンもジュースを飲みながらリラックスしているところを抜かれていたりして、「日本から来たかわいいお嬢ちゃんたち」という目線、番組の構図がひしひし感じられます。しかし、いざダンスが始まると間もなく会場も審査員も大興奮。審査員全員が「想像のはるか上を行っていた」、「今まで見たことのない非常に独特なダンスで確かに日本の魂を感じたわ」、「非常にオリジナリティに溢れ独創的(ユニーク)で最高」と大興奮。

AGTにはこれまで様々なダンスグループが出演して大勢で息の合ったパフォーマンスを見せるグループもありましたが、それらと比べてもアバンギャルディは上を行っていたという評価だったと思います。サイモンも「これまでAGTには非常に多くのダンスグループが出演していて最近はもうおなか一杯で飽き飽き。アバンギャルディはそんな空気を一変させてくれて本当にAGTを変えてくれた」コメントしています。

審査員の彼女たちに対してコメントするときと他の出演者に対してコメントするときの声のトーンも1段、2段違うと思いますし、本当にファンとして彼女たちのパフォーマンスを見るような感じで虜になっていると思います。

チームプレーは日本の専売特許

アバンギャルディの評価が高い理由のひとつにシンクロ(ナイゼーション)のレベルの高さでないでしょうか?アバンギャルディ以外の日本のダンスグループにも同じことが言えると思いますが、大勢のダンスでこんなに息を合わせられるのは、やはり日本の特徴ではないかと思います。

日本では朝から晩まで時間さえあれば5時間でも8時間でも練習というのは珍しくないと思いますが、海外ではプロといえど、2-3時間ほど練習してさっと上がるというのが一般的と聞きます。まして、海外は競争社会、アピール社会なので個々の能力の高さを見せる方が重要です。チームで一丸となってという考え方は日本と比べると希薄です。ダンスだけでなくサッカーやバスケなどでも日本人選手は個人プレーの能力の高さで相手を負かそうとするより、チームプレーで相手を切り崩してこつこつ得点する方が得意だと思います。

また、日本では部活や会社勤めなら第一優先はそっちで、自分のプライベートの時間や家族との時間は二の次というのが一般的ですが、海外ではやはり自分の時間や家族との時間が優先されるので、遅くまで練習とかしないのではないでしょうか?

他のグループには見られない日本の独自性

日本はダンスやスポーツなどに限らず、海外から輸入して日本独自の高い技術に昇華させるというのは高度経済成長の時から得意としています。これもやはり日々の努力の積み重ねであったり、家族や自分の時間より仕事優先という社会が成しえたものではないでしょうか?

アバンギャルディが絶賛されているのはダンスの完成度の高さは当たり前としてそこに留まらず、「コメディを吹き込んだ」という事だと思います。Youtube の動画で振付師のアカネさんが芸人のコロッケにダンスを見てもらって「チームワークもすごいしダンスもうまいけど、もうひとつプラスアルファが欲しい。一生懸命さが顔に出てて表情が険しいから面白い表情を加えた方が良いのでは」と言ってアバンギャルディのメンバーが変顔を加えることにした動画を見ましたが、結果的にそれがAGTでの大成功につながっているので、コロッケ様様ですよね。

それでもファイナルを制せることは出来なかった

そんな大絶賛されたアバンギャルディですが、それでも優勝することは出来ませんでした。決勝に出場するのも敗者復活枠でしたし、何が足りなかったのでしょうか?

私はAGTの全てを見たわけではないですし、ほんの一部しか見ていませんが、だからこそ思うのはアバンギャルディに足りなかったのはメッセージ性であったり、体をフルに使ったダイナミックなパフォーマンスが足りなかったのではないかと思います。

出場者を見ているとハンディキャップを抱えていたり、様々な苦境を乗り越えてAGTにたどり着いたというようなストーリーがあったりします。あるいは大きな体をフルに駆使した豪快でダイナミックなパフォーマンスというのは日本人には難しいですが、海外ではやはりそういったものがより評価されるように思えます。単に演技の技術力が高いというだけだと優勝にこぎつけるのは難しいのかもしれません。

そういうのを見ているとAGTも典型的なアメリカのエンターテインメント番組のような感じがして、様々な利害関係が後ろに感じられます。審査員のコメントなどを聞いていてもアバンギャルディの時の声のトーンと他の出演者の時の声のトーンと違いは感じられますし、それでも結果的には落とされていたりするので、何年後かのインタビュー記事とかでは「実は個人的にはアバンギャルディを押したかった」とかいうのではとさえ思ったりします。

上述の通りアバンギャルディは審査員を虜にしていたと思います。彼らの誉め言葉は損得勘定やただ番組上のうわべだけのコメントではないと思いますし、コメントするときの表情や感情、声のトーンなどから心から感動、興奮して拍手していたと思います。

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