海外出稼ぎというワードがバズっているようです。私もとりわけここ1、2か月くらい日本の知り合いからこちらでの生活や収入に関して結構聞かれるようになりました。
日本の将来を憂いているというのは今に始まったことではありませんが、やはり海外に興味がある人に共通しているのは「日本の将来が不安」ということと、「同調圧力や日本の働き方、上下関係、生産性の低さ」みたいな事に嫌気がさしている人が多いような気がします。
そんな中で最近テレビなどでよく取り上げられている「海外出稼ぎ」の経験者のコメントを聞いて、海外は「高給料で残業なし、人間関係もドライでストレスフリー」というイメージを植え付けられて、「俺(私)も海外で出稼ぎできるかな」と考える人が増えているのではないかと思われます。
1. 海外で稼げるって話は本当?
私は Abema TV で取り上げられている動画を Youtube で見ましたが、それについては以前の投稿で述べていますのでそちらを参照ください。
さて、海外出稼ぎって本当に稼げるのかというと、端的に言えば日本より稼げると思います。ただ、誰もが稼げるかと言えば答えはNoかなとも思います。日本で海外出稼ぎが話題になっているというのは海外に住んでいる日本人の耳にも入っているようで、最近では海外在住者がそれに関して異議を唱える動画もちらほら見られるようになってきました。
いくつかそれらを見て共通しているのは:
- 日本より稼げるのは噓ではない
- しかし、誰もが稼げるかと言えばそうではない
- 月80万円稼げるというのは海外に在住している人でもごく一部の人だけ
- 良い部分だけ語っていて、実際には大変な部分も多々あったり、ビザのルール、制限やオーストラリアのブラックな職場など負の部分については一切語られていない
私も概ね上の考えと同じです。つまり、稼げるか稼げないかは「たら、れば」の要素が強くケースバイケースですので、誰しもが稼げるとは言えません。なので、Youtube やメディアなどで紹介されている事例をもとに語ると以下のようになると思います。
①アルバイトでも月40万円稼げる
ローカルのカフェなどで週5日フルタイムで働ければ全然現実的な話だと思います。ただし、ここがポイントで現地企業で毎週、週5日働ければ可能ですが、ある週は5日入れてもらえても別の週は2日だけとか、全然入れてもらえない週もあるなんてこともありますし、英語力が重要になってくるので英語が堪能でない人は最低賃金を下回るような日本食レストランで長時間こき使われて、実際にはそんなに稼げないとかいう話も聞きます。そういう状況になると月収40万円は夢のまた夢の話になってしまいます。そして、実際に海外で生活しているワーホリや留学生の方はそういう人の方が現実に多くいると思います。
「でも、テレビでは月80万円稼げたとかいう人がいるよ」と思われた方もいると思いますが、恐らくは:
- 特定の月(=収入が多かった月)の金額を伝えている。
- 年間でどれだけ稼げたとか1か月の平均月収という伝え方はしていない。
- 現在はコロナからの脱却で極度の人手不足で週5日働きやすい
というのが理由ではないかと思います。また、バイトを複数掛け持ちすることで1日12時間、14時間近く働かれて合計で月80万円稼ぐなんて言う強者もいるようです。
一方で最近の情勢に伴ってオーストラリア政府は2024年の中頃まで不況になるという予測を発表しています。私の個人的な肌感覚でも実際のこちらのビジネスの現況を見て来年は厳しそうな感じが匂ってきています。オーストラリア政府は現在コロナでオーストラリアから離れて行った移民を呼び戻そうと様々なビザの緩和策を今年に入って取り続けてきましたが、これで人手不足の解消が見込まれてくるようになると、不況と相まって来年は仕事をゲットするのが再び難しくなってくるのではないかとも考えられます。
また、現在は円安でオーストラリアドルは91円辺りですが、通常6、7年かけて60円から100円近くを行ったり来たりする通貨でもあるので、注意が必要です。昨年は80円台、その前の年が70円台、コロナが始まり鎖国を開始した2020年3月で60円台でしたので、円換算した金額には要注意です。例えば年収10万ドルでも今なら900万円ほどですが、2020年なら700万円を切る金額になってしまいます。まあ、だからこそ今、メディアで盛んに取り上げているのかもしれません。視聴率稼ぎには最高のネタでしょう。
②海外で働ければ収入が何倍にもなる、年収数千万円も可能?
もし、同じ職種で仕事内容も全く同じなら、職種によっては2倍になることも可能だと思います。ただし、上述の通り現在は円安なので円換算にするとそうなる職業が多いと考えることも出来ると思います。これが2年前なら、2倍になるケースはもっと低いと思うので、物価高を考慮しても1.5倍前後程度になるというのが現実に即しているのではないかと思います。日本で年収500万円の仕事ならこちらでは年収750万円程度になる。それでも250万円のアップと考えたら大きい金額だと思います。年収が2倍になるケースとしては日本での仕事が極端に安い仕事でオーストラリアでは貴重な人材と見なされるものではないでしょうか?世界有数の物価高、高収入のオーストラリアと言えど年収2,000万円、3,000万円の仕事がうじゃうじゃあるかと言えばそんなことはないです。
例えば高収入で有名なマイニング(鉱山)の仕事なら1年で2,000万円~3,000万円稼ぐことも可能と言われていますが、ガタイが大きくて体力やパワーが有り余っているオージーですら「1年働ければ良い方、どんなに頑張っても2年が限界」と言うほどきつい仕事と言われています。オージーですら1年持たない人が多いのですが、それでも1年何とか頑張って稼いでマイホームの頭金にするとか、翌年は稼いだお金で世界一周旅行に1年間出かけるとかそういう事のためにやる短期の仕事であり、長期で働く仕事ではないと言われています。かつて日本でも高度経済成長の時に炭鉱での仕事がたくさんあって高収入な仕事の一方、仕事がきつかったり、仕事上の事故で命を落とされた方もたくさんいたと聞きます。マイニングの仕事もそれと似ているのかもしれません。
また、こういう話は日本だけでなく世界中に広がっていて、世界中からオーストラリアに出稼ぎにやってくるので、英語は問題ないという人も多い中で勝ち取っていかないといけない厳しい競争があります。だからこそ、ワーホリなどでオーストラリアにやって来る多くの日本人が英語力不足のため現地企業での仕事をなかなかゲットできず日本食レストランなどで最低賃金を下回る金額で働いているという現実があるわけです。
もちろん日本人でも現地で仕事をゲットして高い収入を得ている人もいると思いますが、そういう方は自動車整備とか電気工事とか設備関係、美容師、シェフ、すし職人、会計士など手に職系の仕事をされている方で、日本での経験があって言葉はちょっとハンデがあっても仕事の流れは理解しているとか仕事の技術や完成度の高さは日本の方が全然優れているというケースであったり、オーストラリアの大学、大学院などに通ってその後会計士などの専門資格を取るために膨大な時間とお金を費やしてる方だったりします。
③ワーホリ期間中に貯金が100万円出来た。
これも現実的な話だと思います。上述の通りアルバイトでも月収40万円稼ぐことが不可能ではないのがオーストラリア。物価高と言えど節約の仕方次第で貯金できるわけです。例えば家賃。一人で住めば日本の1LKD のような物件なら月10万円から15万円くらい当たり前にするのがオーストラリアですが、一方でシェアハウスが当たり前のような感じになっていて、シェアハウスに住めば家賃も半分程度に抑えられます。
食事も外食すればべらぼうに高いですが、自炊すれば日本と同じくらいに抑えられます。こちらでは食パンやパスタなどは日本よりも安いと思うので、1年間ひたすらパンやパスタなどを食べるとかすれば1か月の食費も1-2万円程度に抑えられるのではないでしょうか?
また、商品、製品なども大抵のものは日本の1.5倍から2倍程度しますが、中古品や型落ちの物とか無名ブランドのものなどにすることで半額、それ以下にすることもできます。例えば iPhone なら14でなくXで我慢するとか、無名ブランドにするなど。
そんな感じで節約していくと月収40万なら生活費20万円で毎月貯金20万円。月収30万円なら貯金10万円というのはあり得ると思います。でも、これが日本のように月収20万円なら初めから節約する余地が限られるわけです。家賃を払っていれば貯金できるのはせいぜい2-3万円くらいではないでしょうか?
④結論
メディアで報道されていることは全くの嘘ではないと思いますが、あなたがそれを実現できるかは不明ということです。あれはあくまでもレアケースな成功例でむしろ実現できる人はものすごく少数派だと思います。現在は Youtube で海外在住者の様々な動画を見ることが出来ます。そこで物価や収入なども述べられていますし、メリットだけでなくデメリットを述べている動画もありますので、いろいろな動画を見て研究することをお勧めします。
海外生活は良い事ばかりではない、むしろ日本よりもっと大変なことも
海外在住者が動画で言っている通り、メディアで述べていることは嘘ではないにしても極端な事例で、海外生活の負の部分に関しては一切述べられていないと思います。
①海外で月40万円稼ぐには週5日現地企業で働くことが大前提。でも現実はものすごく敷居が高い
Youtube や海外在住者のブログなどを見ると、「現地のカフェで仕事をゲット!」と言う感じで投稿されているものが多く見られます。これは偉業を達成した、これで最低賃金を下回るジャパレスとはおさらばということです。現地のカフェで働くとお客さんも現地の方が主流になるので英語は必須になります。これが日本人にとっては非常にハードルが高く、一方でアジアやヨーロッパから来る人たちは英語に問題がない人が非常に多いので、現地の仕事はそういう人たちに持っていかれるわけです。もし、日本で手に職系の仕事の経歴があれば、現地でも同じような仕事をゲット出来て高収入を実現することは可能だと思いますが、そういったものがなく、英語も片言あるいはほとんど喋れないとなると、時給$10とか$15のジャパレス行が濃厚になるのではないでしょうか?
②貯金を100万円貯めることは可能。でも、それには様々な事ことを犠牲、抑制する必要がある
月収40万円とか30万円稼げたら、一年間で100万円貯めることは可能です。ただ、家はシェアハウス、食費などは極端に削り、旅行などもほとんどしない、など犠牲が必要です。また、バイトを掛け持ちして一日のほとんどを仕事に充てて建物の中でひたすら仕事をしてたら、旅行してオーストラリアの大自然を感じるとか本来のワーホリの目的でもある異国での体験、経験が得られなくなります。それって、本当に幸せな事でしょうか?
オーストラリアにやって来る人は「オーストラリアの様々な場所を訪れて大自然を満喫したい」とか「ワーホリ中にラウンドしたい(車などでオーストラリア大陸一周をすること)」と考える人が多いと思いますが、そういうことをしたら100万円貯めるのは難しいかもしれません。
また、ワーホリが終了して日本でオーストラリアに住んでいたことを話した時、シドニーやメルボルンについてとか、ウルルやグレートバリアリーフに行ったかとかオーストラリア人について、オーストラリアの生活など色々聞かれると思います。その時オーストラリアの様々な事について語れるでしょうか?「シドニー?行く機会なかったからあまり知らない」、「グレートバリアリーフも行く機会なかった。。。」と言う感じになると、「○○さんオーストラリアに住んでたって言うけどあまり知らないみたい」と言う風になり、だんだんオーストラリアに住んでいたことを人に話したくなくなってくるのではないかと思います。同じようにワーホリ経験者がいてその人は色々オーストラリアを満喫していて雄弁に周りに話していたら、それこそ自分で自分を卑下するようになってくるのではないでしょうか?
シェアハウスについては異国の人と生活することで異文化を学べるとか英語力を鍛えられるなどのメリットもありますが一方でトラブルも非常に多く、1か所で何年もずっといるという人は少ないと思います。純粋に人間関係なので、例えば親しい友人や恋人と同棲しても生活スタイルや様々な考え方の違いなどで喧嘩したりすることがあると思いますが、それが全く知らない他人で文化や常識も全く違う人と住むとなればもっとクリアするべき課題がそこには多くあることを理解しないと長くはいられないでしょう。
食事に関しても20代なら毎日パスタや食パンなどでやりくりするというのは問題ないかもしれませんが、30代、40代では健康に影響してきますし、入院なんてことになれば元も子もありません。私も学生時代はお金がなくレーズン入りのロールパン(何個入っていたか覚えていませんが)を2,3日に分けて食べて節約するとかしたこともありますが、当時はそういう自分に悲しくなったことも覚えています。
生活用品についても中古品や型落ち、無名ブランドなどで我慢するというのも、日本でならそういう生活に満足するでしょうか?恐らく多くの人が最新のモデル、機種を通常購入するのではないでしょうか?無名ブランドなんて不安で仕方がないですよね。機能は基本的なものしかないとかバグが多すぎ、すぐ壊れる、セキュリティが不十分でハックされたとか。つまり生活費を抑えるために生活レベルを下げるわけです。これも1年とかの短期なら我慢できるかもしれませんが、長期で続けられるでしょうか?
③何だかんだ言っても結局ワーキングホリデーは期限付き
これから海外出稼ぎを考えている人にとっても、このテーマに関してもこれが最も重要なポイントだと思います。オーストラリアならワーキングホリデーは最大で3年。カナダなど他の国なら1年のみ。仮に年間で100万円の貯金が出来たとしても、それで一生食べて行けるわけではありません。100万円とか300万円というお金は多くの人にとって数年で消えていく額だと思います。
また、ワーキングホリデー期間中1か所で働ける最長期間は6か月です(現在は今年一杯までこのルールが廃止されています)。今の場所では週5日入れてくれているけど、次の勤務先ではあまり入れてくれないなどあるかもしれません。
そして日本に関しては帰国後ちゃんと就職できるのかという問題もあります。海外生活に興味がある人はこれまでもたくさんいたと思います。それでも、多くの人が一歩を踏み出せずに夢で終わっていたのは帰国後、ちゃんと正社員の職に就けるかという懸念を払拭できなかったからです。
海外に行かなくても就職氷河期世代の人とかは新卒時に正社員の職に就けず、ずっと非正規で月収20万円前後の生活を余儀なくされている人もいる社会です。帰国後自分もそうなってしまったらオーストラリアで築き上げた貯金はあっという間になくなるでしょうし最悪の場合、40代、50代になっても低賃金の仕事で何とかやりくりしていかなければならなくなってしまうかもしれません。そうなれば老後も不安ですよね?
海外生活は大変
日本ではあらゆることが便利で生活する上で心配事が少ないです。しかし、例えばオーストラリアなら家の鍵が壊れる、電気がつかない、お湯が出ない、トイレが詰まるなど設備の故障は日常茶飯事です。そうなった時に日本ならすぐ業者の人が来てくれて、1時間程度で直してその後問題なく使えるようになると思いますが、こちらではすぐに来てくれるとは限らない、その時は直ってもまたすぐ壊れるなど修理の精度がものすごく低いです。また、当然すべて英語でやり取りをしなければいけません。
もし、シェアハウスに住んでいたら貸主がなかなか直してくれないとか、電気代、ガス代などが上がったりすると「あら、何でこんなに料金が上がってるの?ちょっと使い過ぎじゃない?もうエアコンは使わないで」などとなることもあります。当然文句を言えばそれ以後態度が変わって嫌がらせを受けるとか、「出ていけ」となるかもしれません。
これはもう貸主の人間性です。そうでない人も大勢います。「足りないものとかあれば補充するから何でも言って」と言ってくれる親切な人もいます。なのでシェアハウスは家賃を節約できる一面、ものすごく神経を使う必要があることもある住まいの形態です。
海外は空気を読まなくてもよい、人間関係はフラット?
これはよく言われることですが、半分本当、半分間違いです。
まず、海外でもサラリーマンなら上司と対峙するときは空気を読みます。会議の場、仕事に関してのやりとりなど。海外の方がトップダウンであることが多く、上司が決定したことは基本的に絶対です。決定するまでに自分の意見を述べることは出来ますが、もしそれが上司と逆の考え方だったりした時は、オージーであれアメリ人であれヨーロッパ人であれ、どう自分の考えを伝えるか悩む場合もあります。「これ言ったら上司に嫌われる、クビにされる」と思えば、言わないという選択肢を取る人も当然います。これも人間性の問題だったり、リーダーシップの教育を受けている上司だと、部下の意見もなるべく耳を貸そうとする人が多いですが、そういうトレーニングを受けてなかったり、「俺は上司だから偉いんだ」という考えしかない人だと埒が明かないこともあります。だから、海外の方が上司との相性がものすごく重要で、上司と合わない=ここではやっていけないとなりがちです。
よく海外に行きたい人が海外に行きたい理由として「日本は同調圧力が強いし、めちゃめちゃ空気を読まないといけない」とか「日本の会社で働いてて会議が無意味に多いとか、書類にハンコをもらうのに何人いるんだと思うくらいハンコの数が多いとか、ハンコも真っすぐ綺麗に押さないとやり直しとか意味わからない。飲みの席では上司が普段何を吞んでいるか覚えておかないといけなかったり、座る位置も気を付けないといけないとか本当に生産性の低さを感じる。外資系と比べると話にならないくらい」と言う人がいます。
また、海外に留学などをした経験がある人もこういうことを言って「海外は自己主張が出来てストレスフリー。私、いつか絶対に戻りたい、日本でずっとやっていくなんてあり得ない」的な事を言う人がいると思います。
でも、海外に留学していた人ってまず、現地での就業経験がない人がほとんどですし、せいぜいインターンで数か月見習い的な感じで軽くその会社の雰囲気だけ味わった程度だと思います。会社からしても社員ではないですし、どちらかというと身内というよりお客様に近い感じだと思うので当然良くないところは見せないですよね?日本で友達や職場で「アメリカでは~なのよ」と堂々と言ったところで、どれだけその情報に信ぴょう性があるでしょうか?
海外では上座、下座的な配慮はないかもしれませんが、例えばオーストラリアで言えば上司が普段ラテを飲むのか、フラットホワイトかとか砂糖、ミルクを入れる入れないだのスタッフは大抵覚えています。これは日本みたいに覚えないといけないということではないのですが、上司に気を使っているわけです。まあ、上司に限らず同僚に対しても同じですし、ランチに行く時とかは誰がベジタリアンで誰が豚肉は食べれないとか、考慮しながらレストランを選ぶなどよくあることです。
海外はまず予定通りに事が進まない、やったと言ってもやってない事の方が多い、プロジェクトは何度も修正
これはアメリカでもオーストラリアでも多くの地域でそうだと思いますが、提出期限などはまず守られません。会社で勤めているとどの仕事でも自分ひとりで仕事が完結することはないと思います。他部署の○○さんからこのデータをもらってとか色々あると思います。そういった時に例えば「水曜までに送ってください」というと「OK!ノープロブレム!」的な返事が大抵返ってきますが、大抵水曜日までに送られてくることはありません。もちろんちゃんとやってくれる人もいますが、少数派です。ひどい人になるとこちらがあらかじめ水曜の朝とかに「大丈夫?午後までに送ってもらえる?」と念を押して、「わかってるよ。今日が期限でしょ?ちゃんと送るから」と言って3時頃になっても送られて来ないので、その人のオフィスに行ってみると同僚が「さっきあがったよ。明日?いや明日から有休だから1か月戻ってこないよ。笑」なんてこともあります。そしてこういう人ほど「オーストラリアは1か月とか有休取れるし、ワークライフバランスがあって最高!」などと周りに吹聴していると思います。まあ、これもオーストラリアは定時で上がるというお国柄です。日本だと今日やるべきことをやってから退社するという感じになると思うので、残業とかも当たり前になってくると思いますが、オーストラリアの職場は学校と同じで(頭の中で)チャイムがなったら帰宅するという風になるわけです。
日本でこういう事があったら、有休から戻って来た時に「有休前にデータ送るって言ったよね?何で送ってくれなかったの?」となると思いますが、海外ではこのように相手を責めることは出来ません。心の中では「この野郎。よくのこのこ戻ってきやがったな」と思っても、「ゆっくり休養できた?良かったね(⌒∇⌒)」と返すのが一般的です。笑
またデータが送られてきてもあちこち間違っていることが多いですし、まず送られてきたものを手直しすることから始まります。日本なら「○○さん、間違いが多いので送る前に間違いがないか確認してから送ってもらえますか?」、「すいません、以後気を付けます」と言う感じになると思いますが、こちらではそれは期待できません。まず、仕事に対しての姿勢もいい加減ですし、ちゃんとできるスキルもない人が多いです。
更に「日本はやたら会議が多い」とか、「日本は行動が遅い、海外は即決即断で動きが速いからどんどんマーケットシェアを奪っていく」と言う人もいますが、逆に言うと後々生じるであろう問題について全く検討していないので、何度も計画を変更、修正を余儀なくされ、その都度修正に膨大な時間や労力が割かれたりします。日本なら「こういう風にしたらこういう問題が起きるよ」と言う感じで先読みしながら事を進めていく感じだと思いますが、海外では「今」目の前にある課題をどうするかと言うことが非常に大事で、後々起こるであろう問題はその時に考えればよいという感じのスタイルで仕事をしていくので、スタートダッシュはトップギアでもその後の右往左往が日本企業と比べると異常に多く、ぐちゃぐちゃにした当人は責任取らされる前に別会社に転職なんてこともあったりするので、ウサギと亀の競争に例えたら海外企業はうさぎ、日本企業は亀なのではないかと個人的に思ったりします。
大手企業と言えど、ひどい対応もしばしば
実は先月、私の銀行のキャッシュカードに付いているVISAの有効期限が切れたのですが、その1か月以上前に銀行から「口座を開設した支店に新しい有効期限のカードを送りましたので取りに来てください」とメッセージが送られてきたのでサポートセンターに電話して「今はメルボルンに住んでいるのでメルボルンの支店に送ってもらえますか?」とお願いし、電話に出た女性が「かしこまりました。メルボルンの支店ではなく現住所に送ることも出来ますのでそのように手続きしますね。到着までに1,2週間かかると思いますのでしばらくお待ちください」と言われたのですが、一向に届かず。21日に電話し「まだ届かないんですけど」と言っても「システムを確認しましたが、現在、転送中のようです。月末までには届くと思いますのでもうしばらくお待ちください」と言われ、月末の2日前に「まだ届かないんですけど本当に届きますか?」と伝えても「システムを確認しましたが、本日か遅くとも明日までには届くと思います」と言われ、もうこの時点では信用していませんでしたが、やはり翌日(月末)のお昼になっても届かず、再び電話して:
私「まだ届かないんですけど、もう届かないですよね?」
相手「いえ、今日中には届くかと思います。もう少しお待ちいただけますか?」
私「いえ、これまで何度か電話してその都度、今転送中でもうしばらくお待ちくださいって言われ続けてきて今日に至ってるんですけど。届かなかったらどうなるんですか?今日で有効期限が切れると思うんですけど、明日以降このカード使えるんですか?」
相手「いえ、有効期限が切れてしまうのでお持ちのカードは使えなくなってしまいます。今日中には新しいカードが届くと思うのでもうしばらくお待ちいただけますか?」
私「いや、1か月前からずっとそう言われ続けてきてるんですよ。いつも電話に出る人は違ってるんですけど。これまで何度かこの番号に電話して電話に出た方にその都度配送中ですって言われてて。昨日も電話して昨日か遅くとも今日中には着くと言われたんですけど。現時点でも届かないってことはもう届かないですよね。で、今日届かなかったら私どうすればいいんですか?明日以降スーパーとかカフェで買い物できないと困るんですけど」
この後も「もうちょっと待って」、「いや届かなかったらどうするんだ」の繰り返しで埒が明かないので「これ以上話しても解決できないので、マネージャーに代わってもらえますか?」とお願いし、マネージャーに出てきてもらいました。
マネージャー「大変申し訳ございません。今、スタッフから新しいカードが届かないと伺いましたが」と言われ、これまでの経緯を説明すると
マネージャー「大変申し訳ございません。只今、システムを確認しましたがシステムの記録では口座を開設した支店にカードが送られている所までしか記録されていないです。」
私「いやいや、それは1か月前に電話した時に言われて、今はメルボルンにいるからそっちに転送してくれってその時頼みましたよ。じゃあ、1か月前から状況は何も変わってないってことですか?これまで何度か電話してその都度、現在転送中ですのでお待ちくださいと毎度言われてましたけど」
マネージャー「大変申し訳ございません。うちのスタッフが転送手続きはしていてシステムの情報をアップデートしていないだけなのか、本当に今も新しいカードが口座を開設した支店で預けられたままなのか、お答えできません。口座を開設した支店に電話で確認して、お客様とスタッフとの電話のやりとりも記録に残っているはずですので、そちらも確認します。」
毎度電話に出た人は同じ人ではなかったのですが皆英語が訛っていたので移民だと思うのですが、多分返事だけして何もやってなかったんだと思います。やる気がなくてやってなかったのかやり方がわからなくて放っておいたのかわかりませんが。あるいはちゃんと手配していても口座を開設した支店の方が怠けていることも考えられますが、こういうことは考えても答えが出ないですしキリがないので考える意味がないです。
私「で、肝心なのは明日以降私はカードがなくてどうすれば良いかってことなんですけど」
マネージャー「今から早急に対応しても、口座を開設した支店からカードが届くまで5日-7日ほどはお時間を頂いていしまいます」
私「その間、私はカード無しでどうすればよいですか?」
マネージャー「お客様は別のカードをお持ちでないですか?」
私「いや普段使いはこれだけなんですよね。おととい、普段使っていない別の銀行のカードをカフェで試してみたんですけど、カードが壊れているのかお店の機械が調子が悪いのか使えなかったです」
マネージャー「後はVISAの番号が変わって良いのであれば、新たな番号のカードを2,3日でお届けできると思いますが、現在のカードをキャンセルしないといけないので、もしお客様のほうでオンライン決済などでカード情報を登録されているとその情報を変更して頂く形になってしまいますが、それでも宜しいですか?」
と言う感じでマネージャーの方はすごく丁寧で真摯な対応をしてくださいました。それでも構わないと伝えて手続きして頂いている時に
マネージャー「お客様、ひょっとして Apple Pay とか Google Pay などにカードを登録されていますか?」
私「はい、してますけど」
マネージャー「よかった。それであればこちらから直接スマートフォンの中にあるカード情報を更新することが出来ます。新しいカードの発行手続きが全て完了したらお客様のメールアドレスに通知が行きますので、その通知から15分程お待ちいただければ、スマートフォンでのお支払いが可能になります。メールは遅くとも今日の夕方までには届くと思いますのでしばらくお待ち頂けますか?」
結局、マネージャーの方とのやり取りの後、1時間後くらいにはメールが届き、15分ほど待ってスーパーに言ったら、問題なく支払いできました。新しいカードもちゃんと2日後には書留で配達されマネージャーの方の対応で全てが解決。1か月以上かかってもちゃんとできなかったスタッフたち、ひとりで1時間ほどで解決したマネージャー。
日本=スタッフからマネージャーまでプロ、オーストラリア=スタッフとマネージャーは全く違う
上のカードの事例で言いたいのはスタッフがどうのこうのと言うわけでなく、海外ではこんなものだということです。そして、こんなことは日常茶飯事です。家の設備に不具合があって修理屋さんが来て修理してもらってもまたすぐ壊れます。むしろ1回でちゃんとビシッとできてるなんてことがあれば奇跡みたいな感じです。スタッフは給料も安いですし、責任もマネージャーのように求められません。もちろん仕事の知識や処理の正確性もマネージャーと比べたら劣りますし、出来なくて当たり前。これは銀行に限らず、スーパー、レストラン、カフェなどどこでも同じです。マネージャーならお客様からの評価も仕事の評価に組み込まれているので、丁寧な対応になりますが、スタッフならお客さんが来店しても携帯を見ていてガン無視とか、他の店員とのおしゃべりに夢中でフルシカト。お客さんもそんなもんだと思ってるので、特に気にしないです。
でも、日本ならスタッフでも上のマネージャーのような対応を求められますし、飲食店とか小売店でお店に入ったらスタッフからマネージャーまであちこちから「いらっしゃいませ」の声が連呼されますよね。言わないスタッフがいたらきっとマネージャーが「お客様が入ってきたらちゃんと挨拶して」と注意すると思います。お客様は神様。スタッフであろうがマネージャーであろうがお客様には粗相があってはならない。なので日本はスタッフでもマネージャーと同様にプロフェッショナルが求められ、それが当たり前になっている。でも、海外ではスタッフは出来なくて当たり前、スーパーバイザー、マネージャーへ昇進していく過程でそういうことを学ぶようになっていくということです。責任と仕事の範囲が広がりますが、それと共に給料も上がっていくわけです。
時々「日本のサービスって過剰じゃない?」という日本人もいると思いますが、確かにそう思う時もあります。それはこの辺りの違いが原因なのではないかと思います。
なので、海外で暮らして日本に帰国した時に日本のそういうサービスを受けると涙チョチョ切れものですし、安心感が半端ないです。
それでも一時的に稼げるのがオーストラリア
以上のように、海外出稼ぎは高収入で定時で上がれて人間関係もフラット&ドライなストレスフリー社会と言うわけではありません。
ただ、「そうは言っても海外に出ず日本に居続けたらずっと貯金は出来ない」と言う人もいると思います。
私は海外に出稼ぎに出ない方が良いと言っているわけではありません。他の海外在住者の方が言っているようにメディアで最近取り上げられていることは良い部分しか伝えていないし、みんなが高収入を実現できるわけではないということです。
それに加えて海外生活の大変さや帰国後ちゃんと仕事に就けるかなど様々なリスクもあるわけで、そういった部分もしっかり吟味して自分の中で「それでも今、海外に出るべきだ。どうなっても後悔はしない」という覚悟が出来たら挑戦すればよいと思います。海外で成功するためには日本の数倍の努力が必要です。どんなことにも積極的に動いて、当たって砕けろ的な部分も時に必要かもしれません。
一方で日本の同調圧力が嫌だとか、上下関係、仕事の生産性の低さに我慢できないというネガティブな理由だけで海外に出ると、「想像していたのと違う」と感じてしまうかもしれません。実際にそう感じて「日本の素晴らしさがわかった」とか「やっぱ日本の方が良いよね」と言って帰国し、日本大好き人間になる人もたくさんいます。
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