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(以下に記す内容は主にすでに海外に移住されている方向けになってしまうかもしれませんが、日本の方にもわかりやすく書くように努めています。興味がある方はご一読ください。)

つい先日まで休暇で日本に帰国していました。例年、年1、2度休暇の際に日本に帰国してはいますが、今回は2017年12月以来なのでちょっと間が開いたことと、ちょっと試してみたいことがあり楽しみにしていました。

それは今回、帰国直前に iPhone を 5S (渡豪直前に日本で買ったSIMフリー版)から XS(パースで購入。モデルを見るとヨーロッパ版と同じようです) に買い替えたので、海外版 iPhone の Apple Pay が日本でも使えるか試してみたかったのです。

オーストラリアは非常に多くの人がスマホを端末にかざしてピッ!と支払いを済ませる人が多いです。帰国直前に日本も最近キャッシュレス決済がかなり浸透しているということを聞きましたので、私のように海外に在住している人間にとっては1台の携帯で日本でもオーストラリアでもはてはそれ以外の国でも大抵のものがピッ!と1台の携帯から支払いを済ませることができれば、両替のわずらわしさもなくとても便利です(もっとも私の場合帰国の際には日本の銀行のキャッシュカードを使って現金を引き出していますが)。

私の携帯での結果を先にお伝えすると、①Suica を Apple Pay に登録できれば、Suica での支払いに対応している店で使用可能。②①でなければ現状(2019年1月時点)大手ではローソン(及びその系列?)のみで使用可能。ローソンは訪日外国人客を取り込むために Visa の Paywave に対応しています。

iPhone の場合、かなり以前からSuica をApple Pay に取り込めるよう要望があったそうですがアップルが正式に許可したのが、実は iPhone 7以降だそうです。少し技術的な話になりますが、Apple Pay にしろ Google Pay にしろ、これらはそれ自身が支払い手段でなく Suica や Visa、Master といったカードの決済情報を提供する手段であるためそのお店が Suica に対応していれば、自分のApple Pay (アンドロイドユーザなら Google Pay など)から Suica の情報を提供できるかがポイントとなり Apple Pay か Google Pay かは問題にはなりません。

また、日本の Suica などは Type F と呼ばれる通信規格が使われている一方、海外では Visa や Master といったカード会社は Type A/B と呼ばれる通信規格を使用しているそうです。また技術的な話になってしまいますが、Type A/B は Type F に比べて技術が複雑でなく汎用性が高くて低コスト。ネットで調べた限り具体例は示されていませんでしたが、私が使用している範囲で感じるのは、Suica などは交通機関での支払いのみでなく様々なお店での支払いにも使用できますが、オーストラリアの場合、Suica のような公共交通機関のカードはバス電車などの交通機関のみ、他のお店では使えません。

なぜこのような違いが日本と海外で生じたか。恐らくは下記の通りでないかと思います。

①Type F が Type A/B より早く国際機関に標準A/B規格として認証された(日本国内ではType F が遅滞なく標準技術として認証された)。

②Type A はヨーロッパ企業、Type B はアメリカ企業の下で開発され、それらが低コストで複雑な技術を問わないことからアメリカやヨーロッパを中心に普及率が高い Visa や Master に採用された。

③日本の場合、現金主義でデビットカードもなくクレジットカード普及率が極端に低く、カードといえば Suica や Pasmo、Nanaco といったプリペイド式がから始まったことや Type F の開発がソニー(Edy)でその技術に日本の各企業が準拠した。

長い間、Type A/B と Type F の併用は技術的にすごく困難と言われていたそうですが、上述の通りアップルが iPhone 7 以降日本の Suica も取り込めるようにしたことから、これを Visa や Master への裏切りと称している批評もあるようです。逆に言うとそれだけ日本のマーケットがアップルの世界シェアの中で大きく無視できない存在、板挟みにあった末の結果と考えることもできると思います。

そんなわけですが、どちらが良い悪いというつもりはありません。日本と世界ではお互いの背景も違いますし、バスや電車だけでなくコンビニやその他の様々なお店で使える Suica なども便利で魅力的だと思います。

ガラパゴスと感じられた方もいるかもしれませんが、それもありじゃないでしょうか?ガラパゴス=ダメとなってしまうと技術は育たないと思います。海外は今、とにかく東南アジアに低価格で大量に物を作らせたり売るためにそんなに複雑でない技術、低コストで安価なものを提供することが好まれます。例えば衣服ならユニクロやH&Mは世界中に受け入れられていて、ファッション性を兼ねてつつ、低価格でそれなりの質を維持している。でも、本当に良い服を求めようとすればきりがなくなりますし、そうなってくると一部のお金持ちにしか手が出せない。iPhone はカメラも音楽も非常に質の高い機能を有したものが携帯という箱にオールインワンのような感じで入っていますが、カメラの性能に関してはやはりデジカメには及びませんし、音質もたとえばソニーのウォークマンの上位機種などと比べたらこちらも及びません。でもそれぞれ別個に買ってさらにiPhone も買うなんて一部の人にしかできませんし、むしろ誰もが知っているあの iPhone を持つことにステータス性を感じる人も東南アジアなどの地域には多いのではないかと思います。東南アジアは経済成長が著しいですし、貧困層から脱して iPhone なら買えるくらいの購買力を付けている人も増えています。かつて日本でも高度経済成長のころは白物家電など作れば売れるという時代があったと思いますが、今の東南アジアはそんな状況だと思います。

でも、日本はそんな時代はとっくに通り越してしまい、普通のものでは満足しません。私は10年後とか東南アジアでもそういう時代に入ってくると思いますし、その時求められるのはやはり付加価値=技術だと思います。日本は資源がなく技術を磨いて成長してきた国です。本来、国や業界などが手助けしてでも守っていくべきと思われる技術を、90年代後半にはサムソンに日本人職人を大量に引き抜かれたり、近年では鴻海にシャープが買収されたり、いまガラパゴスと称されていることは10年後それらの国からしたらもしかしたら素晴らしい技術と称賛されるかもしれません。鴻海の事例は先駆者的なものだと思いますが、10年後とかは日本の高い技術力を狙ってくる海外企業はもっと増えるのではないかと思います。長い時間かけて育てた技術が一瞬でお金で買収される。そんなことは起きてほしくないです。

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