オーストラリアは現在、オーストラリア市民と永住者については国外からの入国のみならず、国内から国外への出国についても規制をかけています。日本や欧米、台湾、シンガポールなどは入国に関しては制限を課しているものの、出国までは規制をしていないと思います。なので、オーストラリアはとても規制の厳しい国だということがわかります。だからこそ、感染者の抑え込みに成功しているということもできるかもしれません、ただ、出国は全くダメと言うことではなく特別な事情がある場合には許可を申請するという形になっています。7/13現在は家族の重大な病気又は死亡のためあるいはインドでの感染拡大を抑える仕事に携わるなどごく一部の理由でしか出国できません。
もし、一時帰国が必要な場合、コロナ禍の現在オーストラリア政府が出入国の規制を撤廃するまで待つ方が無難だと思います。家族が亡くなったなどどうしても帰国しないという場合でも、日本のご家族と話し合って帰国しないで済むような形に話を持っていけるならそうした方が良いかもしれません。理由は書類の準備から帰国費用まで何から何までものすごく大変だからです。書類準備でも単純に日数がかかるというだけでなく、何が正しい、OKをもらえる書類かわからなくて途中で何度も不手際が起こりその度にストレスが溜まりドッと疲れが出ます。航空会社の方の話だと以下の理由で入国が認められず行きに乗ってきた便でそのままとんぼ返りすることとなったケースも少なくないそうです。
- 当日書類不備でオーストラリアの空港から飛行機に乗せてもらえなかった
- 日本に入国する際に日本政府が規定する検査方法や陰性証明のフォーマットに即していない
それでも、どうしても帰らないといけない、「帰らない」という選択肢がないというのであれば、以下を読んで頂いて下準備を入念にしてください。
今回はオーストラリアからの出国までの投稿となります。日本への入国に関しては長くなるので次回の投稿で述べます。
オーストラリアから出国するには(オーストラリア市民・永住者の場合)
オーストラリア政府は現在コロナ禍でオーストラリア市民及び永住者の出国、入国に制限を課しています。もし、何らかの理由で急遽帰国したい、あるいは急遽帰国しなければならないといった時、現状は航空券を手配して当日空港に行けばOKというわけには行きません。まず最初に、オーストラリア政府から出国の許可(Travel Exemption)を得る必要があります。
Leaving Australia | COVID-19 and the border (homeaffairs.gov.au)
もし、家族の死亡等で帰国したい場合、以下のプロセスが必要になります。
①Travel Exemption の申請(オーストラリア政府)
上記のリンクからオンラインで申請できます。ただし、申請の際に家族の死亡が理由ならそれを証明する書類の提出が必要になります。上のリンク先では Death Certificate が例示されていますが、日本の制度では Death Certificate に相当するものがありません。なので、Travel Exemption の申請の前に以下の下準備が必要となります。
日本総領事館等で死亡日が記載された戸籍を持参し英訳してもらう
日本でご家族が亡くなられた場合、通常医師の死亡診断書等を貼付して戸籍のある市区町村に死亡届が出されると思います。戸籍に死亡日が記載された時点でその戸籍をオーストラリア国内の日本総領事館等で英訳してもらう必要があります(Death Certificate として発行してくれます)。また、帰国をされる方と亡くなられたご家族の関係(父、母等)を証明するためにご自身の戸籍も準備し、自分と亡くなられた方の関係が記載された謄本を一緒に英訳してもらいましょう(Birth Certificate として発行してくれます)。
コロナ禍の現在、郵便事情も悪く日本から戸籍を郵送してもらうとなると通常より日数がかかるかもしれません(7/13現在、日本からオーストラリアへのEMSは停止しています)。原本でなくPDFでも良いかなど、お住いの管轄の日本総領事館などに相談してみましょう。
また、英訳してもらうのに1週間程度かかると思います。なので、
- Travel Exemption の申請の準備に7-14日程度
- Travel Exemption の許可が出るまでに4-7日程度
- PCR検査に2-3日程度
- 日本での自主隔離に14日
と、出国まであるいは日本のご家族に会うまでにかなりの日数がかかることを認識しておく必要があります。当然葬式はもちろん四十九日の法要などにも間に合わない場合もあるので、そのことを日本のご家族に事前に知らせて理解を得ておきましょう。なので、ご家族が入院中の段階から早めの帰国をするか検討することもコロナ禍では重要です。もし、ご家族に理解があり「コロナ禍での帰国は危険だから帰って来るな」というのであれば、コロナが蔓延している異例の世の中、我慢してそれに従うのもひとつの考えかもしれません。
Travel Exemption を申請する
いよいよ申請です。一発で Travel Exemption の許可をもらうためにも「出せる書類はなるべく全て出す」が原則です。例示されているパスポートや現在のビザの詳細なども漏れなく提出しましょう。私の場合は許可が出るまでに4、5日ほどかかりました。出国、帰国の予定日などを聞かれますので、予め航空会社の便などをチェックしておきましょう(航空券の予約は許可が下りるまではする必要はありません)。
②航空券を手配する
日本に帰国するには出国前72時間以内のコロナの陰性証明が必要ですが、出国のための検査の場合、出発便の詳細などを求められるので、Travel Exemption の許可が出た段階で、航空券を手配しましょう。
なお、現在はコロナ禍で便も限られていて往復の航空券代がべらぼうに高いです。更に、7月14日からオーストラリアへの1週間の入国者数を6,370人から3,070人に減らすことが決定され、それに伴って東京ーシドニー間の片道の航空券代が70万円を超えて上昇していますし、JALは11月頃まで予約がいっぱいで航空券の手配すら難しい、ANAもそれに近い状況です。日本でホテル隔離をすると往復航空券代+日本でのホテル隔離+帰国後のオーストラリアでのホテル隔離で15,000ドル(約120万円)近くになるかもしれないということを覚悟しましょう。コロナ前だったら往復航空券代10万円ちょっとだけで済んでいたので、全然違います。
③コロナの陰性証明をゲットする
コロナ禍の現在、出国の72時間以内にコロナの陰性証明をゲットしないと日本行きの飛行機には乗れません。検査を受けた場所にもよりますが、通常検査の結果に24時間あるいは48時間を要するようなので、3日前(72時間前)に検査を受ければ安心でしょう。
陰性証明をゲットする際の注意事項
現在ネットなどで日本への入国の際の書類不備によるトラブルが多発していることが伝えられています。特に多いのが、
- コロナの陰性証明で検査方法が日本の指定した方法に即していないということ
- 医師の署名がない
ということだそうです。特に注意が必要なのが、日本が指定している検査方法の1つが「Nasopharyngeal Swab」という方法で、この検査方法は海外でも主流ですが、この方法で行われても検査結果の用紙に検査方法として「Nasal Swab」と記載されている場合が多く、日本政府は「Nasal Swab」での検査はダメとしています。この場合、入国は認められないそうで出発国へ強制帰国になり、指定された検査方法で再度陰性証明を取る必要が出てきます。
「Nasopharyngeal Swab」と「Nasal Swab」の違いは鼻の穴から検査の棒を眉間の所まで奥深く入れるか(Nasopharyngeal Swab)、鼻の穴の先っちょに軽く突っ込んで検査するかの違いだけだそうで、英語圏の医師からすると「Nasopharyngeal Swab」という医学的な用語で記載するより「Nasal Swab」という一般的な単語の方が検査結果を受け取る人にもわかりやすいだろうということで、どちらの検査方法でも「Nasal Swab」と記載するのが一般的だということです。
私の場合も散々「Nasopharyngeal Swab と記載して」とお願いして「ちゃんと記載するから大丈夫」と言ってくれたにも関わらず、「Nose Swab & Throat Swab(唾液の採取による検査)」と検査結果の用紙には書かれていました。これは恐らくその病院で使用しているソフトウェアのデフォルトの設定でそうなっていると思われ、修正がきかないのではないかと推測します。なので、外務省が所定のフォームを用意しており、それを持参して医師にその辺の事情をしっかり説明して記入、サインしてもらうと良いと思います(下のリンク)。
また、医師の署名ですがどこの検査場でも医師のサインを得られるとは限りません。むしろ、もらえないケースも結構あると認識しておきましょう。特に1日に万単位の人の検査を実施するために大規模検査場を設けているところが多く、そのような場所だと大人数をさばくため医師がおらずドクターの資格を持ってない人が検査キットを教えられたとおりに使用しているだけだと思われます。医師の署名をもらうにはGPに検査してもらう必要があります。普段風邪の時などでお世話になってるGPがいれば、そこにお願いするのが良いと思います。もし、そこで新型コロナの検査をやっていなければ、検査をやっている別のGPを紹介してもらいましょう。
検査の予約も一苦労
オーストラリアのVIC州の場合、検査予約が必要な場所、検査予約が不要で好きな時に訪れることが出来る場所(ウォークイン)の所があります。ただし、どちらに行くにも事前に「Pathology Request」を取得しないといけません。PCR検査を受けたい場合には直接病院ではなくフリーダイアルのホットラインに電話します。そこが一斉に州内の居住者からの予約を受け付け、受診者の住所や検査日時の希望等を聞いて近くの検査場にブッキングをします。ブッキングが完了すると「Pathology Request」がメールで送信されてきます。印刷して持参しましょう(検査時に渡す必要があるため)。
また、普段お世話になっているGPに診てもらいたい場合は、この時にそれを伝えましょう。そこがPCRテストをやっていて特に予約日時等に問題がなければ、そこに割り振ってくれると思います。
さて、ここでひとつやっかいなのが、この予約方法のプロセスです。予約はホットラインで予約センターのようなところで一斉に予約を受け付けていると思われ、なので彼らはどこの病院がどういう検査方法とか一切把握していません。また、こちらが日本に緊急で帰国する、日本政府の定めた通りの方法でやらないと入国できないと説明しても、それは彼らの仕事の範疇でないので「知ったこっちゃない」という感じです。なので、ホットラインに電話する前に近所のGPなどに電話してあらかじめ事情を説明して検査方法や医師の署名を得られるかなど確認しておいた方が良いです。それでOKなのが確認出来たらホットラインに電話して、そこの病院に予約を入れてもらうようお願いします。
でないと、当日指定された病院にいったらそこでは検査方法が違うあるいは医師の署名が得られないとなった場合、すぐ別の病院を探さないといけません。仮に72時間前に予約を入れてても当日別の病院での予約が確保できなければ、翌日はもう日本への出発の48時間前、検査結果が出発前までに取れるか微妙な感じで非常に焦ると思います。また、前日にシドニー入りをするとなれば、48時間前に検査を受けて24時間以内に検査結果が出るところが必要になってきます。
これが海外在住者がなかなか日本政府が定めた方法による陰性証明が得られない要因だと思います。オーストラリアに限らずアメリカなども、ドクターの資格を持った医師が不在の大規模接種会場を多く設けていると思います。検査方法の英語表記の問題も同様だと思います。緊急帰国の必要な海外在住者の多くの人が「こんなの海外でちゃんとやってくれるところないよ」と嘆いているそうです。これをクリアするには上述のような入念な下準備が必要です。
④出国
Travel Exemption とPCR検査の陰性証明が取れればいよいよ出国です。現在日本への直行便は減便やサービス停止によりシドニーに限られていると思います。もし、他州からシドニーに最初に飛ぶ必要がある場合、NSW州の入州制限なども事前に確認する必要があります。7/13現在、NSW州はVIC州からの入州に関して、入州24時間以内のオンラインでの Entry Declaration の申請を求めていますので忘れずに。飛行機を降りて出口を通る際に職員に確認されます。
Travel to and from NSW | NSW Government
そして、NSW州へ行く便も場合によっては予約が既定の数に届かず前日などにキャンセルになる場合もあります。もし自分の住んでいる州でロックダウンがあった場合はロックダウン後は特に起こりえますので、前日にシドニー入りすることも検討したほうが無難です。一泊ホテル代がかかりますが、コロナ禍で便も少ない中で日本行きの便を逃す可能性を考えたらその方が得策かもしれません。また、自分の飛行機のターミナルも確認しておきましょう。シドニーの場合T1とT2・T3はかなり離れています(車で20分程)。私はT1だったのですが、その事に気づかずT2・T3がある方に行ってしまい、慌ててタクシーで移動しました(少し早めに出てたので1時間前にはチェックインを済ませられましたが)。
⑤空港でのチェックイン時に必要書類が全て揃っているかチェックされる
日本行きの飛行機に乗るために空港に行き、チェックインカウンターでチェックインを済ませるときに Travel Exemption と日本政府が求めているPCR検査の陰性結果の証明がチェックされます。ここで揃っていないと、飛行機に乗ることができないと考えておきましょう。実際に当日チェックインの時まで Travel Exemption が必要なことを知らなかったり、日本政府が定めている要件を満たさない陰性証明を持参してくるケースも結構あるそうです。その方たちが飛行機に乗って無事日本に入国できたかわかりませんが、搭乗拒否にならないよう上述の事はきちんと済ませておきましょう。JALの場合、搭乗の数日前からメールでこれらのことを確認するよう促すメールが毎日送信されてきます。私がチェックインした時は「ここまでちゃんとやってくださって助かります」と言ってくださりチェックインの手続きはスムーズにいきました。
チェックインが済めば後は通常と同じ流れです。出発ゲートを通って搭乗ゲートまで行き、搭乗時刻が来たら搭乗します。最後にここでほっとして、Travel Exemption や申請証明を無くさないようにしましょう。搭乗前に飲み物や食べ物を購入してほっとして席に着いた際に書類を手元から話してしまう、テーブルの下に落としてしまうなどあっては全ての苦労が台無しです。
⑥入国時に必要な書類、アプリのダウンロード等
空港でチェックインを済ませると日本政府が求めるアプリのインストールについて記載された紙が渡されます。入国前にインストールということなので搭乗前にインストールしておきましょう。また、搭乗すると機内で上述の提出書類を渡されます。フライト中に記入しておくとよいでしょう。具体的には以下のものになります。
- コロナの陰性証明
- 「Web質問票」及び「誓約書」
- 「入国される皆様へのご協力のお願い」
- 「出国前検査の受検及び入国に当たって必要なアプリのインストール」
- 各種アプリのインストール(iphone なら3つ、Android は4つ)
7/13現在、オーストラリアはコロナの感染者が少ない地域とされ、オーストラリアから日本に入国する際は自宅又はホテルでの14日間の自主隔離となっています(国によってはホテルでの強制隔離とかもあります)。公共交通機関(タクシーも含む)の利用はできないとされているので、家族に空港まで車で迎えに来てもらうかレンタカーを空港でゲットするかハイヤーを予約するかになると思います。ホテル隔離なら空港のすぐそばのホテルが良いと思います。
コロナ禍での帰国は本当に大変です。準備する書類、時間、費用のどれも半端ではありません。家族の死亡等どうしてもという理由でなければ、感染者数を抑え込んでいるオーストラリアに留まることの方がメリットが大きいです。日本にいるご家族に理解があって「日本は今危ないから帰国なんて考えずに当面オーストラリアに残ってなさい」といってもらえるなら、それに従うのもひとつの考えだと思います。
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