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オーストラリアで生活して11年。パース、シドニー、メルボルンと渡り歩いてきました。そして、今回、パースとゴールドコーストにいる友人や元の職場の人達などとも再会し、ここ最近すごくよく聞くのが、このフレーズです。特に移住者から聞かれるフレーズ。

オーストラリアは本当に住みやすい国なのか?

コロナ以前のオーストラリア

コロナ以前はオーストラリアは堅調な経済成長を重ね続けていました。私の投稿でも何度も述べていますが、2000年以降の中国の急速な経済成長に合わせてオーストラリアも天然資源や大麦、オージービーフ、オーストラリアワインといった食料品をガンガン中国に輸出。その結果、マイニングブームや毎年3%程度の経済成長を20年ほど続けていたと思われます。それは日本の高度経済成長(4-5%を20年間)と似たようなものだったのではないかと思います。オーストラリアの場合、物価だけでなく給与も同程度上昇しバランスが取れていたと思います。

その結果、世界から多くの人達がより良い収入を求めてオーストラリアにやってきました。日本ではここ数年海外出稼ぎとしてオーストラリアが注目されていますが、長年元々一人当たりの稼ぎが日本やオーストラリアよりはるかに少なかったアジア系の人たちなどにとっては、以前からオーストラリア=オーストラリアン・ドリームであったわけです。日本では80年代、90年代辺りまでアメリカン・ドリームという言葉があって多くの人がいつかアメリカに渡りたい、向こうで生活したいあるいは一攫千金を夢見て成功したいというのがありましたが、それと同じことだと思います。

オーストラリアは時に景気の浮き沈みや移民の流入過多などの問題もありましたが、総じて経済も安定して成長を続け、治安も良く人種も多種多様の国、リラックスした雰囲気に広大な自然、インフラも整備された西洋圏の先進国という点で住みやすい国と言うことが出来たと思います。

コロナがオーストラリアの状況を変えた?

そして、コロナの発生でオーストラリアは2020年3月に国境を封鎖しロックダウンを敢行。当時の首相、スコット・モリソン氏は「オーストラリア政府はオーストラリア市民及び永住者には金銭的な支援をする。短期滞在者(旅行者、ワーホリ、ビジネスビザ保持者など)は知り合いの援助が得られなかったり自力で経済的にオーストラリアで生きていけないなら、国境が封鎖される前に母国に帰った方が良い」と公共の電波で明言。これによって多くのワーホリや留学生などが母国へ帰ったと言われています。そして、これに伴って多くの投資用不動産(住宅)が売却、他の用途に転用され、居住用不動産の数が国内で減少したと言われています。

2021年12月。オーストラリア政府はコロナ感染者を抑えている国から入国を許可。段階を経て2022年3月頃までに完全に国境封鎖を解いたと記憶しております。国境封鎖やロックダウンで長く閉店を余儀なくされた小売店、レストラン、ホテルなどは営業を再開。ここで人材不足が問題となり、ビザの緩和によってワーホリや学生ビザなどで移住者が激増。深刻な住宅不足、家賃高騰が問題となります。

需要が高まり値段を上げられるとなったら一斉に値上げをするのがオーストラリア。あらゆるものが値上がりし、政府は物価上昇を抑えるべく金利を何度も上げますが、それでも物価の上昇は止まりません。2022年、2023年は7%台、2024年は5%台。金利の度重なる引き上げは住宅ローンの返済にも影響、毎月10万円の返済だった人は20万円に増えたとか、20万円だった人が30万円、40万円近くまで膨れ上がったとか言う話もよく聞く話で、その結果不動産所有者は金利上昇分を家賃へ転嫁、更なる家賃高騰の引き金に。

オージーも移住者もみな生活が苦しい

最近、ユーチューブやメディアなどで「海外出稼ぎの話を聞いて日本からオーストラリアにワーホリでやって来たけど仕事も家もゲットできず、100万円の貯金ができるどころか日本から貯めてきた貯金がどんどん減っていって、思い描いてたのと違っていた」という話が多く流れていますが、現地のオージーや永住者でもみな生活が苦しいとこぼしていますし、日本人以上に世界中から多くのワーホリ、留学生がやってきて仕事の取り合いになっている状況です。そのような状況で英語が不得手な日本人ワーホリの人がそういう状況になるのはおかしくないことだと思います。

先週、今週とパース、ゴールドコーストを訪れ知り合いや元職場の人たちなどとも再会しましたが、みな同じです。オージーですら今仕事を失ったら生活が破綻すると危惧していますし、特に知り合いのアジア系移住者から最近よく聞くのが最初の「オーストラリアは本当に住みやすい国なのか?」という疑問です。

家や分譲マンションを購入している人は住宅ローンの返済で大変ですし、そうでない人は1億円を楽に超えるようなオーストラリアの不動産を購入すべきか躊躇している人も少なくないですし、住宅ローンで購入するにしてもオーストラリアの住宅ローンの金利は6%台。先日メルボルンで3LDKのマンションの新築物件の広告を見ましたが3億円を超えていました。それは極端にしてもメルボルンなら2024年10月現在では1ベッドルームあたり3千万円~4千万円ほどするようです。2LDKなら6千万円~8千万円、3LDKで9千万円~1億2千万円くらいがメルボルンの相場。東京なら新宿とか晴海、豊洲あたりあるいは山手線圏内の23区であれば似たような相場かもしれませんが、一歩外に出れば価格はがくんと下がります。吉祥寺以西とかであれば3LDKでも5千万円を切るような相場でないでしょうか?しかも金利は最近上がったとは言え変動金利ならまだまだ1% を切るような金利。

30年間物価が上昇しなかった日本と物価も金利もとんでもなく上がり続けるオーストラリア

パースで元上司に「日本では過去30年間物価も給料も上がらず多くの国民が明るい未来を描けず嘆いている」という話をしました。そして、「過去30年間上がらなかった日本と今、とんでもなく物価や金利が上がり続けているオーストラリア、どっちが良いと思う?」と聞いたところ、日本という答えが返ってきました。「日本人は我慢が出来る民族だと思うし、政府もしっかりコントロールしていると思う。オーストラリアや他の国もそうだと思うけど、日本人みたいに我慢が出来ないから値上げできるとなったら一斉に値上げするし、政府もその時の状況で短絡的に規制を厳しくしたり、ゆるゆるにしたりするから、常にぶれておかしくなる」と言ってました。コロナの時はジョブキーパーやジョブシーカーなどで無尽蔵にお金をばらまいたり、コロナ後人材不足が深刻化してビザのルールを緩和した結果、移住者が増えすぎて家賃高騰や住宅不足問題が露呈したりそして現在はビザのルールを急激に厳しくしたりと政府の短絡的な政策の事を言っているんだと思います。

私の個人的な見解では、日本ではこれまで過去30年間物価や給料が上昇しなかったことを嘆いていますが、逆にオーストラリアだけでなくオーストラリアよりももっと状況がひどいアメリカや同じ問題に陥っているカナダ、ニュージーランド、ヨーロッパの移民大国の国々では、「日本は何故過去30年間物価上昇を抑えてコントロールすることが出来たのか?」という声が大きくなって、日本が専門家によってもっと研究されていくのではないかと思います。

はっきり言ってどちらが良いのかはわかりませんが、確かな事は多くのオージーや永住者が現在の生活は苦しいと感じていること、政府も一生懸命問題を解決をしようとしていますが、現時点では状況は改善せず、手を焼いているということです。この状況が今後改善されていくのか、アメリカのようにもっとインフレが進むのかはわかりません。来年以降急速に物価が抑えられてくるかもしれませんし、そうでないかもしれません。そのような状況の中で移住者の多くが感じていること、それが「オーストラリアは本当に住みやすい国なのか?」という疑問だと思います。

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