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コロナの状況が2極化し方針転換する州とそうでない州

シドニーがあるNSW州は1日の新規感染者が1,000名を超え、「デルタ株をゼロに抑え込むのは無理」と決断し、ワクチンの接種率を70%近くまで上げて少しずつ規制を解除して経済を回す方向に方針転換しました。メルボルンがあるVIC州も2日前に100名を超えたところで、NSW州同様に方針転換をすることを発表しました(現時点では9月23日まではロックダウンを維持)。

一方、ゴールドコーストやケアンズがあるQLD州はNSW州やVIC州同様、一時期感染者数が増えましたがロックダウンで再び抑え込みに成功し、感染リスクが高い州からの入州は禁止しながらも州内での規制は緩和しています。そして、それ以外の州は相変わらずデルタ株による感染拡大を防いでコロナを抑え込み続けていて感染リスクの高い州からの入州は引き続き禁止しています。

連邦政府も方針転換?

連邦政府はNSW州の方針転換を受けて他の州にも「デルタ株をゼロにすることは不可能。ロックダウンを繰り返せば経済は死ぬ。だから他の州もコロナとの共生を受け入れてワクチンの接種率を高めながら少しずつ規制を緩和してワクチン接種率が70%を超えたら州境を開けていくように舵をきりなさい」と指示したのですが、これがNSW州・VIC州以外の抑え込みに成功している州知事から大批判。

「シドニーやメルボルンが感染拡大して抑え込めなくなったからという理由でうちらにも州境を開けてうちらの州内で感染を拡大させろだなんてあり得ない。そんな理屈が通用するわけがない。今まで散々デルタ株は危険だから不要不急の外出はするなと州民にずっと言ってきたのをここで急にコロナと共生していきましょうなんてひっくり返せるわけがない。シドニーやメルボルンの問題はうちらとは何の関係もないし、うちらは完全に抑え込んで州内はほぼ規制なしで経済もそれなりに回っている。もちろん州境はコロナのリスクが低くなればその時点で開けるが、NSW州やVIC州が規制を緩和していく方向に舵を切ったからという理由だけでうちらもそれに歩調を合わせろなんて無茶苦茶だ。」とコロナを抑え込んでいる州と感染拡大を抑え込めなくなった州とで完全に姿勢が変わってきました。

また、7月以降、度重なるロックダウンに我慢できなくなったシドニーやメルボルンで発生したデモも少なからず影響を与えているのかもしれません。

マスコミも煽るかのように連日報道し、オーストラリアはコロナ対策が原因で東と西で分断されるかなどちょっと現実味に乏しい極端な内容を伝えているところもあります。ただ、国民は国民でロックダウンに我慢できなくなってデモを起こしたり、州知事と連邦政府でお互いに自分の考えを主張し合って曲げないところは、どこかの国とはずいぶん違うなと感じます。

今は去年の今頃と同じような状況

デルタ株がシドニーやメルボルンを中心に急激に拡大する以前の5月頃までは、連邦政府は「デルタ株はこれまでのコロナウィルスと比べて感染力が半端ない。とにかく不要不急の外出は控え、抑え込まないといけない」と連日呼びかけていました。しかし、シドニーやメルボルンが抑え込みをあきらめ方針転換したことで、連邦政府も上記のように方針転換し、各州に接種率を高めて州境を開けるように指示ました。これが度重なるロックダウンに参らされているNSW州・VIC州とそれ以外の州で意見が完全に別れて分断をも辞さない感じの空気も生まれましたが、よくよく考えてみると昨年3月に連邦政府がオーストラリア全土のロックダウンを決め、その間に全州で抑え込みに成功し、6月に解除した後、7月にメルボルンでクラスターが発生し再び今のNSW州のような感じになって他の州がVIC州を恐れて州境を閉め始めたときに、連邦政府は同様にロックダウンは経済を死なせる、コロナと共生する世界を考えないといけない、州境をクリスマス前までに開くようにと指示していました。その頃はVIC州以外は最初の連邦政府によるロックダウン以後ほぼ完全にコロナを抑えていたこともあり、最初は反対を堅持していた州も結局クリスマス前までに州境を開けましたが、年明け後のイギリスの変異株やデルタ株の出現により、またロックダウンマインドが各州で発生して逆戻りになった感じがします。

現時点では反対している州もワクチン接種率が高まりシンガポールや欧米がうまくいっている様子がうかがえれば、それらの州も最終的には少しずつ歩調を合わせていくのではないかとも考えられますが、今再び南アの変異株や東京株などあらたな変異株も報道されてきているので油断はできません。デルタ株は初期のコロナウィルスとは比べ物にならない感染力があるのかもしれませんが、ロックダウンの長期化は経済に大打撃なのは間違いないので、何とか安全を確保しつつ規制緩和そして州境や国境の再開に結び付けてほしいです。

現在、連邦政府は10月あるいは11月までにオーストラリア国内のワクチン接種率を70%まで上げていき、州境を開けるだけでなくワクチン接種率を高めている国やコロナを抑え込んでいて危険性が低い国との国境再開をできれば12月頃に実現させたいと考えを表明しています。例としてシンガポールや台湾、英米、そして日本を上げていました。これを受けて、オーストラリアの航空会社であるカンタス航空は12月に一部国際線の再開を表明し、日本への便もそれに加えていました。ただ、あくまでも政府が計画している通りに接種率が上がり、コロナの状況が今より悪化していないことを要件としています。現時点では「そんなに簡単に接種率は上がるとは思えないし、12月に国境再開なんて今の状況を見てたら現実味がない」と考えている人が多いのではないでしょうか?

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