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前回はオーストラリアで住む場所を探す際に Gumtree などのサイトで見つける場合と不動産屋を通して借りる場合のメリット、デメリットについて述べました。

オーストラリアではシェアハウスがすごく一般的で日本人に限らず多くの人が一人で住むよりシェアハウスに住んでいます。Gumtree などでシェアハウスを見つける場合などについては多くのサイトから情報を得ることができます。

ですので、ここではパースにおける不動産屋を通して賃貸物件を借りる場合の流れについて述べていきます。あくまで私の経験の範囲でのことですので、私が述べることと違う場合もあるかもしれません。ちなみに、私はこれまでシェハウスに2件、不動産屋を通して賃貸物件を借りたことが2回あります。

①不動産広告をチェック

日本と同様に不動産屋に訪れるかウェブサイトで広告物件を見ることができます。

②興味のある物件に関して質問するあるいはインスペクション(下見)の予約を入れる。

広告内容に関して質問があればメール、電話で質問できます。下見をしたければ下見ができるかメール、電話で問い合わせます。パースの場合、通常広告に出している物件の下見は何人かの希望者が集まった時点で行うことが多く、1人だけの下見希望者のために不動産屋の人が物件の場所まで鍵を持って来ることはあまりないような気がします。下見の希望日は伝えられますが、「その日は無理」と言われることも多いです。あと、広告自体が古いのかメールで問い合わせても返事がない、電話にも出ないこともしばしばです。日本では考えらえませんが、こんなところもオージースタイルでしょうか(笑)。

③インスペクション当日

インスペクションの予約ができたら当日は早めに着きましょう。通常そのマンション、アパートの入口のゲート前が集合場所になりますが、②とは対照的にさっさと中に入ってしまう不動産屋の人もいるので、2,3分遅れたがためにゲート前には誰もいなくて自分だけ入れなかったなんてこともあります。中にはとっとと済ませたいからか指定された時間の2,3分前に「もう誰も来ないわね」なんて勝手に決め込んで、「さっ、中に入りましょう」なんて不動産屋もいます。

インスペクションでは疑問に思ったことは必ず確認しましょう。入居開始日、水道光熱費(水道代は払わなくて良いなど物件によって色々あります)、セキュリティ、駐車場、ペット、喫煙、周りの環境などなど。こちらの不動産屋の人は正確でないことも多く、間違って覚えている場合もあります。後で違うと言っても「何で質問しなかったの(質問してないあなたが悪いでしょ)?」と言われて対応してくれない場合もあります。オーストラリアでは不動産の賃貸に限らず基本的にどんなことでも質問して間違った答えが返ってくれば、間違って答えた方に非があると考えられますが、そもそも質問しなかったりすると、質問、確認してない方が悪い(質問しない=納得、合意している)となってしまうことが多いです(もちろん嘘や虚偽の表示で大きな損害を被ったという場合などは別ですが)。オーストラリアではこのようなトラブルは誰もが何度も経験するので、それを防ぐ意味でも自分にとっての重要事項は広告の記載内容に間違いがないか確認のためにあえて質問している人もいます。

インスペクションの最後に不動産屋の方から、感想を聞かれ「入居を申し込みたかったら、この申込書に記入して私にメールで送ってね」という感じで、申込書を渡されます。興味がなければ受け取らずに去っても良いですし、興味があればその場で口頭で入居希望を伝えることも「家で考えます」と保留することもできます。

④入居申込書を提出する

入居申込書には自分の氏名、現住所、現在の収入などだけでなく、パスポート、こちらの運転免許証、メディケアカード、現在の住まいのオーナー・不動産屋や以前住んでいたところのオーナー・不動産屋の連絡先、勤務先の情報、上司の連絡先なども求められます。こちらではリファレンスと言って、記載されたオーナーや不動産屋、勤務先の上司などに連絡して申し込み希望者の人柄、部屋を綺麗に使っていたか、勤務先での評判などを審査のために調べられます。問題がありそうな人には貸したくないということです。「えっ?」と思うかもしれませんが、今オーストラリアに到着したばかりとかでなければ基本的に偽りなく素直に書くのが良いのではないかと思います。それで問題がないことが確認されれば、自分が選ばれる確率が上がるわけですし。

さて、日本だと下見してここに住みたいと思った時にその意思を示せば「じゃあいつ入居しますか?」となると思いますが、パースでは上述の通り日本と違いインスペクションにはあなた以外にも何人か参加者がいて複数の人が入居を希望するケースもあります。その場合は競争になります。私がパースにやってきた2013年頃はまだまだマイニングブーム(資源ブーム)の名残があって、当時は賃貸物件の広告自体ほとんどありませんでした。広告に物件が出れば、インスペクションには10人とか20人近くいることもあり、住む場所を獲得するのが本当に難しかったです。入居申込書には家賃をいくらまで払えるか金額を記入する欄があり、広告に提示されている家賃よりはるかに上の金額を書いている人が選ばれているなんて話も聞きました。今は人気物件でなければそんなことはないと思います。貸す側からしても高い家賃は払うけど色々注文が多いとか問題を起こす人より、家賃を毎回決められた通り払ってくれる、部屋をきれいに使ってくれる、問題を起こさずに自分や近所に迷惑をかけないような人に住んでもらうことが重要だからです。

⑤賃貸借契約書

見事入居者として選ばられたら、入居開始日、引っ越し業者のトラックの駐車、荷物の搬入場所、鍵の収受など最終的な調整、話し合いをします。そして、賃貸借契約書も渡されるので一言一句細かく読んでください。賃貸借契約書は日本のものと記載内容は基本的に似ています。家賃の金額、契約期間から貸主・借主としての権利、義務など細かく書かれています。

先ほども述べましたが、こちらの不動産屋はそもそも正確に物事を把握していない、覚えていないことも多く、また、ある程度大きい不動産屋になると、下見立ち合いの人、契約書を作成する人、物件のメンテナンス関係担当の人などが分業化でバラバラな場合もあります。

オーストラリアはアメリカなどと同様に契約社会で契約書に書かれていることが基本的に全てです。下見、入居時に口頭での確認だけだと、後々何かあった時に下見に立ち会った担当者はもう離職していて裏が取れないとか契約書を作成する人はその物件に訪れたことも物件に関しての知識も全くなく、あくまで社内の決められた処理の仕方で契約書を作成しているだけなので、別の何もわかっていない担当者に振られたりなど、埒があきません。

私の経験言うと下見の際は水道代はタダと言われましたが、契約書には100%借主負担と書かれていました。話が違うから契約書を直してくれとお願いしましたが、「え、そうなの。私は契約書を作成するだけだから、物件のことに関しては全然知らないの。下見に立ち会った人に聞いてみるからちょっと待ってて」、「今確認したら。水道代は間違いなくタダで、それは気にしなくて大丈夫。心配しないで」と返されましたが、「いや、後々もめたく無いからちゃんと契約書を修正して」と他のいくつかの項目と一緒にお願いしましたが、修正された契約書には他の部分はちゃんと直してくれていましたが、「水道代借主100%負担」は直っておらず、再度しつこくお願いしました。パースでは水道代は正直微々たるものでほとんどかかりませんが、やはり契約書に疑問があればはっきり違うことを示して修正してもらうことが大事です。日本では考えられませんが、修正をお願いして「直しましたので再度確認してください」と言いながら直っていないなんてことも珍しくありません。それにサインしてしまったら合意したことになってしまいます。

⑥入居開始

パースでは入居開始時に鍵などと一緒に Property Condition Report が渡されます。寝室、キッチン、ダイニング・リビング、バスルームごとに、壁、ドア、什器備品、窓、カーテンなどありとあらゆる物の状態(傷、へこみ、汚れなど)が事細かに記載されていて、ひとつひとつその通りか記載と異なるか示していきます。その数は間取りにもよりますが、1ベッドルームの物件でA4の紙で10数ページ、100数十点に上ります。

とにかく面倒くさいですが、ここで手を抜いてチェックを怠ったり、適当に返事してしまうと後でいらぬトラブルに見舞われる場合もあります。しっかり確認して「傷もなく綺麗」と記載されているのに細かな傷、汚れがあるなど記載と異なる場合は必ずそれを示すことが重要です。写真も撮って不動産屋に送っておけば不動産屋としてもオーナーとの話し合いなどで写真を見せることができスムーズに事を運べられるので、むしろ煙たがるより喜ぶと思います。

⑥不動産屋によるインスペクション

オーストラリアでは日本と同様に賃貸借契約書にオーナーや不動産屋が合鍵を使って、賃借人に許可なく入ることを禁じていることが多いと思いますが、部屋を綺麗に使っているかインスペクションする権利を契約書に盛り込んで、実際に定期的にインスペクションが行われます。通常、実施日の1週間、2週間前などに郵便、メールなどでお知らせが来ます。実施日を変えてもらうことをリクエストできるかどうかあまり覚えていませんが、当日立ち会っても立ち会わなくてもどちらでもよい場合が多く、「別に立ち会わなくても、こちらで勝手に合いかぎ使って入ってチェックするから大丈夫よ。」なんて言われると思います。

オーストラリアはあらゆることが雑とよく言われますが、契約や検査、審査となると真逆でものすごく細かく厳しいです。よく入国審査でオーストラリアに持ち込める物のルールが他の国と比べてすごく厳しいと言わると思いますが、代表的な事例だと思います。また、日本人は小さいときからしつけられているので大抵の人が物を壊さないよう気を付けたり部屋を綺麗に使いますが、移民の国オーストラリアでは様々なバックグラウンドの人が住んでいて、物の扱いは雑ですし日本で言われる汚部屋のような感じや、インド系の人などはスパイスを多用して部屋がスパイス臭くなって臭いが取れなくなるなどオーナーからすると借主も様々、自分の物件の価値を下げられないかものすごく不安で神経を使う部分があると思います。あなたが物件を探しているとしたらスパイスのにおいの取れない部屋に住みたいでしょうか?当然貸主としては家賃をものすごく下げるなどしないと貸せませんよね。

私の経験では、あるとき仕事がものすごく忙しく週末も出勤して掃除ができなくて、その場しのぎで部屋の真ん中とその周りだけをささっと掃除して綺麗にしたのですが、インスペクションで部屋の端の方のほこり、汚れなどを指摘され、「再インスペクションを○月○日にします。それまでにちゃんと綺麗にしておいてください。再インスペクションでも引っかかった場合は清掃業者を呼んで綺麗にします。その際の清掃費用、不動産屋の立ち会いにかかる人件費などすべてのコストはあなたに請求します。」と通達されました。再インスペクションはちゃんと通りましたが、インスペクションでは本当に隅々まで多少のほこりも見逃されることなくチェックされるので事前に完璧と思えるほどきれいに仕上げることが重要です。ほこり、汚れはもちろん、キッチン周り、換気扇の羽の油汚れ、シャワールームのタイルの目地のカビなどは特に念入りにしましょう。

日本の場合、最近のマンション、アパートなどはメンテナンスのしやすさやコスト削減の観点から間取りが同じであればどの部屋も同じ壁紙、ドア、フローリング、窓を使用していて、キッチン周りの什器備品、収納棚なども同じメーカーのもので統一されていてます。素材もカビが発生しにくい素材を極力使用するとか結露対策を考慮したつくりになっているなどメンテナンスの観点から非常に考え抜かれたつくりになっていますが、オーストラリアの場合、オーナーは自分の物件=自分の財産。好きなようにデザインでき、自己表現の場でもありそれを知り合いなど周りの人に自慢する。なので、同じマンション、アパートでも部屋によってデザインが全くバラバラで、壁紙からフローリング、窓など部屋ごとにすべて違い、デザイン重視のつくりで、結露がひどい、シャワールームのタイルはカビやすいなどメンテナンスの観点から借りる側が大変な部分もありますので、日ごろからこまめに綺麗にしておくことが大事です。

⑦オーナーによる売却

賃貸期間中にオーナーが賃貸物件を売りたいと考える場合があります。契約期間中は契約に基づき住むことが可能で追い出される心配はありませんが、契約期間が終了した時点で更新できずに退去することになる場合もあります。

それは理解できるとしてもオーナーとしてはなるべく早く買い手を見つけたいので、賃貸期間中でも広告に出して興味がある人に内覧をさせる場合があります。日本では考えられませんが、あなたが住んでいる最中に「そこの物件売りに出したから、興味がある人にあなたの部屋見せてあげて」と依頼が来てそしてそれは基本的に断れません。不動産屋が必ず立ち会いますが、オーナーも不動産屋も私も誰も知らない他人が一度に何人も自分の部屋に入って、私物を置いてある自分の部屋を見回る。日本人の私の感覚からするとこれは本当に勘弁してほしいなと思いますが、郷に入っては郷に従えです。内覧の日時はこちらが指定できるのですが、通常週1回、週末が多いです。インスペクション同様「都合が悪ければ合鍵使って開けるから立ち会わなく手良いわよ」なんて言われますが、私物がなくなったらなんて思うと立ち会わないわけにはいきませんし、すぐ買い手が見つかればよいですが、そうでなければ何か月も続きます。本当に嫌です。

日本では借主がすごく保護されていて、更新を希望したければ大家が仮に自分でそこに住みたいとしても、借主が続けて住むことができると思いますが、オーストラリアでは貸主が圧倒的に強いです。シェアハウスも契約書がない以外は基本的には同じです。ですので、オーストラリアでは物件を買うのが一番いいと思うのですが、日本の倍近くあるいはそれ以上しますので、とても手が出ません。以前は2000万円も出せればかなり選択肢があって選べた不動産ですが、ここ十年ほどで急騰して今は安いものでも4000万円~5000万円台、6000万円~8000万円あるいは億越えの物件も珍しくなく、以前から物件を所有している人であれば、それを売り払って元手にして別の物件を購入することも出来ますが、大学卒業して間もないような若いローカルの人にとってもマイホームは夢のまた夢になりつつ、「オーストラリア人なのに何でオーストラリアで家が持てないんだ」と多くの人が不満を持っています。

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